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連載コラム 11年前

W杯前に知っておくべきブラジルフッチボール。“叩かれやすい男”ドゥンガ「自分の欠点は敵ではなく友達」

ロマーリオを説き伏せた94年W杯

 ドゥンガが狙われたのは、彼のプレースタイルも関係している。

 ドゥンガは堅実な選手である。不用意なドリブルはしない。相手選手を引きつけて、長短、正確なパスを出す。声を出して、味方のポジショニング修整も的確だ。こうした選手が1人いればチームは落ち着く。

 しかし、ブラジルで珍重されるのは、華麗で、ドリブルの巧みな選手である。これはブラジル人の国民性に起因しているとぼくは思っている。

 全てではないにしても、ブラジル人は勤勉を小馬鹿にしているところがある。額に汗して働くよりも、出来れば楽して儲けたい。――ピッチの中で例えれば、ロマーリオのような選手だ。

「献身的な守備」「前からのディフェンス」などという言葉を彼は鼻で笑うことだろう。試合中はゆったりと動き、ほとんど消えていることもある。しかし、彼は一瞬でディフェンダーを欺き、点を獲る。ずるがしこさ、卓越した技術、そして閃きがあった。だから、彼は多くのブラジル人から愛された。

 ドゥンガがブラジルで評価を取り戻したのは、94年W杯アメリカ大会でそのロマーリオを使いこなしたからだ。

 ロマーリオは練習に遅刻、規律を平気で破ることで知られていた。しかし、結果を残すので我慢しても使わざる得ない選手だった。大会前、ドゥンガはロマーリオと向き合って辛抱強く話し合うことにした。

――自分たちの目標はW杯に勝つことだ。そのために何が必要なのか。

 ドゥンガはロマーリオに説いた。

 大会中、ロマーリオは、表面上は問題を起こすことはなかった。そして、ブラジル代表は24年ぶりに優勝を成し遂げたのだ。

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