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セリエA 11年前

カルチョの国からの最先端戦術理論(後編)セットプレー専門家が6000以上のパターンから日本代表にもたらす大きな可能性

text by 宮崎隆司

イタリアですらセットプレーを軽視する傾向が

 そして、ヴィオの結論はこうなる。

『年間15ゴールクラスのFWを獲得するには、ここ欧州では概ね1000~1500万ユーロ(約13~20億円)ほどが必要とされる。だが、そんな資金を用意するなどは言うまでもなく至難の技だ。

 ところが、このセットプレーで昨季の(フィオレンティーナのような)実績が残せるとすれば、これまた言うまでもなく、「年間23ゴールクラスのFW」を獲得するのと同等の意味を持つ、と。そこまでの数字を残せなくとも、年間15ゴールクラスのFWを獲得するに等しいことは確かだ。モンテッラはこの重要性を理解し、だけでなく非常に重きを置いている』

 ヴィオが積み上げてきた実績はもちろん、特別に(門外不出)を条件に見せてもらった『今季用に新しく考案した』というセットプレーの形(フォーメション)もまた、『年間15ゴールクラスのFW』を確信させるに十分な中身だった。つまるところ、「このコーチを活かさない手はない」というのが率直な感想である。

 ところが、ヴィオは次のような実情を明かしてくれた。

『チーロ(・フェッラーラ)がユベントスの監督として呼ばれた際、UEFA Aのライセンス講座で一緒だった私は彼に誘われてね。話はまとまっていた。だが残念ながらそれは叶わなかったんだよ。なぜか。チーロに対してアリゴ(・サッキ)がこう言って止めたからだ。「それ(セットプレー)は監督の仕事だ。専門のコーチを雇うなどあってはならない」。

 要するに、ここに“サッカー大国”と言われる国、もちろんイタリアだけじゃない、欧州における主要国の悪しき伝統とやらが横たわっているんだよ。それはもしかすると限界とも言えるだろう。

 ここイタリアだけじゃない、英国でも多くが「We are the best」と躊躇なく言うようにね。もっとも、今の私は、そうではない唯一というべき監督(モンテッラ)に出会うという幸運を得ているんだが…』

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