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香川真司 10年前

在英翻訳記者がマンU 退団“疑惑”報道から読む――。香川真司が史上最高である理由

シリーズ:フットボール母国の神髄 text by 森昌利 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

前半だけで交代した香川にコメントを求めたワケ

 それは1ヵ月ほど前にさかのぼった9月30日のことだった。西沢を追いかけ始めた12年前から親交が続いている英高級紙『デイリー・テレグラフ』のマーク・オグデン記者から、「シンジのコメントをくれないか」と頼まれたことがきっかけだった。そのコメントは、その2日前に行われたウエストブロミッジ戦の直後に香川が話したものだった。

 この試合、香川は前半だけで謎の交代を遂げた。後半、香川の代わりに出場したヤヌザイがこの試合ではインパクトを残せず、マンチェスター・Uが1-2のスコアで、ホームでは1978年12月以来となるウエストブロミッジ戦敗戦直後、モイーズ監督は日本代表MFの交代について、「変化を見たかった」とだけ説明した。こうした状況で、地元記者も香川の交代を疑問視していたのである。

 少し嫌な予感もした。ここで香川のコメントが欲しいということは、日本代表MFの交代をひとつの攻撃材料にして、35年ぶりとなったウエストブロミッジ本拠地敗戦を喫した”モイーズ批判”を展開することもできるからだ。

 さらに、この2週間前には、代表戦後の香川が「(選手起用に関しては自分は分からないので)監督に聞いてください」とコメントして、APの記者が”監督の采配批判だ”という記事に仕立て、大問題になっていた状況もあった。

 しかしここは長年の付き合いがあるマークを信用して、香川のコメントを翻訳したのである。それに、もしかしたらこれが、英語のコミュニケーションがまだ完全とは言えない香川の声をモイーズに伝える機会になるかも知れないとも考えた。

 また、取材に制限があるマンチェスター・Uの場合、記者同士がコメントを回し合う慣例もある。香川の取材ができる日本人記者も毎回代表2名。この日は僕の順番だった。だから直接話を聞いた人間として、こうした頼みを断るわけにはいかない事情もあった。

 そこで香川の談話の以下の部分を翻訳してマークに渡した。

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