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香川真司 10年前

在英翻訳記者がマンU 退団“疑惑”報道から読む――。香川真司が史上最高である理由

シリーズ:フットボール母国の神髄 text by 森昌利 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

驚くべきタブロイド紙の“煽り”

 最初はBBCの電子版だった。すると当然のようにスカイスポーツの電子版も追いかけた。その直後、大衆紙では最も影響力が強いザ・サンが、タブロイド紙らしい見出しをつけて、香川のコメントを紹介した。

「I must shape up or ship out」(鋭さを増さねば下船)。「下船」はもちろんマンチェスター・U退団を意味する言葉である。本人はそんなことを意図する言葉は一言も発していないのだが。ついにはタブロイドのデイリー・スターが、「Shinji Kagawa hints at Man U exit」(香川真司がマンチェスター・U退団を示唆)というセンセーショナルな見出しをつけ、後追いのハンディを押しのけようとする記事を掲載した。

 この後、マークに提供した香川のコメントは、瞬く間にスペイン語、フランス語、ドイツ語に翻訳され、欧州中に駆け巡った。香川の肉声が英語になると、これほど伝達力が凄まじいものになるのか。翻訳者としては、驚愕を越え、唖然とした。

 しかし、この事実は僕に、英国暮らしのトータルが18年間以上になりながらも、マンチェスター・Uというクラブの大きさ、そこでプレーする選手の偉大さを本当に意味で分かっていなかったということを知らしめた。

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