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城福浩~父の背中が語るもの~

text by いとうやまね photo by Kenzaburo Matsuoka , junior soccer editorial staff

毛布と父、包まれていた父の思い

城福浩~父の背中が語るもの~
城福は、自分が年を取るにつれ、当時の“父の思い”を想像するようになった【写真:松岡健三郎】

 城福の両親は、スポーツに対して理解があった。父は若い頃に剣道を、母はバスケットボールの選手をしていたことがある。兄弟をサッカースクールに入れたのも、スポーツに対する理解があったからに違いない。両親は応援にも熱心だった。特に父の姿は、今でも鮮明に記憶に残っている。

 父は毛布にくるまって、ピッチサイドで大声を張り上げていた。その毛布は、おそらく、病室から「拝借」したものだと思われる。父は、若い時分に大病し、それ以来、入退院を繰り返していた。家にいなかった時期もある。中学になると、試合のたびに、毛布と父親がやってきた。母が付き添って、入院している病院から、車で乗りつけるのだ。

 父は、自分を含めたチーム全員に、

「頑張れ!もっと行け!」

 と、はっぱをかけた。

 城福には、それが恥ずかしくてならなかった。

 父の必死さの意味。その有難さがわかったのは、だいぶ後になってからだという。思えば、必要だと言えば、スパイクや道具はすべて揃えてもらえた。決して贅沢できる家ではなかったが、サッカーで遅れた勉強を取り戻すために、家庭教師まで雇ってくれた。

 サッカーにおいて、不自由を感じたことなど、一度だってない。

『子どもたちのやりたいことを決して邪魔しない』
『周りの環境を整え、できる限り後押しをする』

 城福は、自分が年を取るにつれ、当時の“父の思い”を想像するようになった。

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