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バルサは伝統を捨てたのか? 経営面から見る胸スポンサーを導入せざるを得なかった理由

text by 小澤一郎 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

ロセイ会長とカタールの関係

 サンドロ・ロセイ会長は、ナイキ社のマーケティング部門のマネージャーを務めたやり手のビジネスマンであり、特に南米のサッカー界で幅広い人脈を構築していた。副会長として関わったジョアン・ラポルタ会長時代、ロナウジーニョ獲得に一役買ったことはよく知られている。

 その後、彼は2002年にボーナス・スポーツ・マーケティング(以下、BSM)という企業を設立し、2006年より「ASPIREフットボール・ドリーム」というカタールの一大プロジェクトにスポンサーとして参加している。

 同プロジェクトは、ASPIREアカデミーというカタールにあるエリートスポーツ選手育成機関を中心に進められ、発展途上国の子供たちにプロサッカー選手になるチャンスを与えることを目的とするもの。

 これには、国連の「国連開発と平和のためのスポ―ツ事務所(UNOSDP)」のバックアップに加え、メインスポンサーとしてナイキ社がついている。このプロジェクトがきっかけで、カタールとコンタクトを持ったロセイ会長は、2010年12月、カタール財団との契約締結を発表する際、このような発言を残している。

「私とカタールとの関係は、私が所有していた会社が携わった、公的な貢献をきっかけに4年半前に始まった。それをきっかけとして、多くのカタール人と共に働くことで、親交を深めていった」

 また、会見の席で自らのBSMを2010年7月に売却したことを明らかにしているが、新たな所有者を明かさなかったため、2013年1月29日発売の『フランス・フットボール』誌は、バルサとカタール財団との契約以前に、ロセイが秘密裏にカタールにバルサのユニフォームの胸スポンサー権を譲り、将来的にカタール航空へと渡すことで同意していたという裏取引の疑惑を掲載した。

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