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2015年の君たちは――。東京ヴェルディユース、花の92年組を追って:第2回 大木暁(駒澤大3年)・相馬将夏(法政大3年)

「就職して安定した生活を送ったほうが自分のためかと思うことも」

 相馬の良さはボックス内のプレーに集約される。クロスに対して点で合わせる。相手より先んじて動き、裏でパスを引きだす。ディフェンダーからすっと離れた瞬間にボールを受け、反転して素早くシュートに持ち込む。いずれも周囲との呼吸が欠かせない。

「僕は足が特に速くもない、身体が大きく強いわけでもない。ドリブルでぐいぐいボールを運べるタイプでもありません。そのぶん、ポストプレーやシュートの精度が大事なんです。献身的に、真面目にチームに貢献する。

 そのスタイルは自分に合っていると思います。ユースの頃は周りに巧い選手がいて、生かされていたんですね。大学に入ってからは、そのあたりに手間取って、監督の評価も獲得できませんでした」

 法政大の同期の12人のうち、7人がプロ志望だという。進路について、悩むことはないのだろうか。

「悩みますよ。12月1日の就活解禁の前から、スーツを着て活動している同期はいます。面接対策のセミナーやSPI試験の対策らしいです。それを横目に見ながら、はたしてサッカーでごはんを食べていける力が自分にあるのか、考えることはある。就職して安定した生活を送ったほうが自分のためかと思うことも。

 でも、最後の1年、死ぬ気でやろうと決めたんです。このまま競技生活を終えたら、あとで絶対に後悔する。どんな結果になろうと構わない。親には心配をかけていますね。こないだ父と話したら『おまえ、このままサッカーやるんだな? じゃあ、がんばれ!』と言ってくれて。感謝しています」

 素朴な疑問が浮かぶ。サッカーが好きなのは当然として、何が彼をそこまで駆り立てるのか。20代の頃の僕は、そうまでして執着する対象をもった経験がない。

「たぶん、高3の1年間を味わっちゃったから。サッカーしてるなぁ、って心底思えたシーズンだったんです。2010年の夏、たくさんの人たちに応援してもらえて、いいスタジアムで試合ができて、勝って喜んで、負けて悔しがって、本当に幸せでした。あの充実感を、気持ちの高ぶりを、僕は3年間味わっていない。忘れられないんですよ。やみつきってやつですね」

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