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W杯スタジアム建設はなぜ遅れているのか? 横行する賄賂、不正な入札、ブラジルサッカーの暗部に迫る

text by 沢田啓明 photo by Kenzaburo Matsuoka , Getty Images

工期の遅れもやはり計画的なものか

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工期の遅れは計画的なもの?【写真:Getty Images】

 ただし、コリンチャンスはスタジアムの建設費用を全額捻出することなど不可能だ。そこで、建設費用の約半分を公的資金で賄うことをサンパウロ州に認めさせた。

 建前では、ワールドカップの12会場は厳正な入札を経て建設業者が選ばれることになっていた。しかし、ほぼすべての会場で、建設業者が談合、カラ入札、賄賂の授受などの不正行為があったとされている。

 最もスキャンダラスな例が、首都のブラジリア国立競技場だ。入札で選ばれたのは、約7億レアル(約308億円)を提示した建設業者だった。しかし、その後、設計プランの変更、材料費や人件費の上昇、さらには意図的に工事を遅らせておいて「緊急工事が必要」と状況をでっち上げたとみなされるケースまで含め、ありとあらゆる理由で建設費用を吊り上げた。最終的な建築費用は、15億レアル(約660億円)と入札価格の2倍以上となった。

 近年、ブラジル国内で各種材料費や人件費が上昇しているのは事実であり、多少のコスト増はやむをえない部分がある。しかし、実際の建築費用が当初の予定の2倍を超えるとなると、もはや入札した意味などない。

「入札で勝つためわざと低い金額を提示し、その後、なし崩し的に上げた」と見るのが自然だろう。しかし、一度、建設工事が始まってしまうと、業者を交代させるのは極めて困難だ。もちろん、業者はこのことをすべて見通した上で、低い金額で入札したにちがいない。


 ブラジルの闇は深い。スタジアム建設現場での安全性は万全のものではなく、悲惨な事故も起こっている。交通機関などインフラ整備も遅れており、そもそも今必死でつくっている箱モノが大会後には無用の長物となる可能性もある。下院議員に当選したかつてのスター、ロマーリオは問題点を指摘し、期待されているが…。

続きは『サッカー批評issue65』にて、お楽しみ下さい。

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サッカー批評 ISSUE66

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