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W杯スタジアム建設はなぜ遅れているのか? 横行する賄賂、不正な入札、ブラジルサッカーの暗部に迫る

text by 沢田啓明 photo by Kenzaburo Matsuoka , Getty Images

反対意見を封じ込める悪党の常套手段

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大衆への“ガス抜き装置”の役割も担うフットボール【写真:松岡健三郎】

 デモ隊は、ワールドカップの開催そのものに反対しているのではない。

 ブラジルがFIFAの要求に唯々諾々と従い、莫大な費用を投じて分不相応に贅沢なスタジアムを建設させられ、その一方で、これまでないがしろにされてきた公共サービスの質が一向に向上しないことに反発して、「我々にもFIFA基準の健康、教育、公共交通サービスを」と訴えたのである。

 そもそも、2009年にブラジルがワールドカップ誘致に成功した際、当時のブラジルフットボール協会リカルド・テイシェイラ会長(数々の金銭疑惑を指摘されて2012年3月に辞任)は、「スタジアム建設費用を含め、開催には公的資金を一切使わない。国内外の企業からの民間投資ですべて賄う」と大見得を切った。

 できそうもないことを「絶対にできる」と言い張り、とりあえず反対意見を封じておいて、以後、なし崩し的に自分の都合のいい方向へ誘導しようとするのは、この国の悪党の常套手段だ。

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