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Jリーグ 10年前

Jクラブは地元に勝利以外をもたらしているか? クラブが本当に地域に愛され、必要とされるために

text by 小澤亮太 photo by Kenzaburo Matsuoka

Jリーグの調査。対象はホームクラブ応援者

 続いてクラブと地域の関係だ。Jリーグは毎年観戦者調査というレポートを発行しており、先日発表された2013年版の「Jリーグとコミュニティ」では「79.1%がホームタウンへの貢献を認めている」「82.8%がJクラブが地域で重要な役割を果たしていると感じている」と報告をしている。しかし、この調査の対象者がホームクラブ応援者であることには留意をしたい。

 また、上述したスタジアムの改修はもちろんのこと、練習場やそのほかハード面での整備、またクラブへの資金援助なども含めて自治体が出す資金は、もちろんそこに住む住民が納めた税金から支払われることとなる。クラブにとってみればスタジアムの改修はやってくれるものと思い込んでいるかもしれないし、自治体にもクラブへの協力義務があることは上で確認したとおりだ。

 しかし、必死に働いて住民が得たお金を意味のあるもの、スタジアムの改修含めて「クラブに使ってくれてよかった」と思ってもらわなければならない。その努力をクラブは能動的に行う必要があることは明白だ。読者の皆さんのサポートクラブはどうだろうか?

 クラブと地域の関係を検討する上で、2つの事例を比較してみよう。私は今シーズンの開幕を九州で迎えた。土曜日に向かった鳥栖では鳥栖駅のホームからサガン鳥栖のホームグラウンド、ベストアメニティスタジアムが見え、駅員は皆サガンのTシャツを着用していた。改札やアウェイサポーター用のゲートには徳島ヴォルティスサポーターを歓迎する看板や垂れ幕もあった。

 次の日、V・ファーレン長崎のホームグラウンド、長崎県立総合運動公園陸上競技場に向かうべく、筆者は諫早バスターミナルでバスを待っていたのだが、係員も運転手もV・ファーレンのTシャツや何かを身に着けているわけではなかった。観客数も5248人とJ2昇格初年度でJ1昇格プレーオフに進出したチームとしては寂しい数字だった。

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