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ロシア、クリミア併合による最悪のケース。プーチンの強硬姿勢続けばW杯開催権返上の可能性も

text by ブックマン二郎 photo by Getty Images

クリミアはロシア人にとって特別な土地

 ロシアにとってW杯は悲願だ。簡単には手放さないだろう。W杯開催地を決定する抽選会にはプーチン大統領の横にはチェルシーのオーナー、ローマン・アブラモヴィッチがいた。彼が何をしたかは明白だ。カタールがしたように、プーチンの財布となったのだ。

 そうして苦労して手に入れたスポーツの祭典を無下にはできない。開催権返上による国際的なイメージがダウンしてしまうことは避けたいだろう。

 とはいえ、だ。それを上回るものがあるならば話は別だ。

 クリミアはロシアにとって特別な地域だ。半島の南西にあるセバストポリはクリミア戦争ではオスマン帝国を退け、第二次大戦ではドイツ軍の占領から取り戻した地である。ソ連時代には「英雄都市」の称号を与えられており、思い入れは強い。

 また、地政学的にも重要だ。クリミア半島のある黒海はロシアにとって重要な不凍港の一つである(他はムルマンスク、カリーニングラードなど)。高緯度に位置するロシアにとって一年中使用することができる港は国家的な願望であり、領土拡大の大きな要因となった。セバストポリはウクライナがソ連から独立後も軍港を租借していたほどだ。

 軍事的にも大きな意味がある。NATOが艦隊を置く黒海では1997年に黒海艦隊協定が結ばれ、ロシアは艦隊の配備について限定的になっていた。ロシアにとってこの協定は邪魔なものでしかなく、クリミア併合によって協定を一方的に無効にし、新たな配備を進めている。NATOへの牽制という意味で、クリミアの軍備強化は一層進むだろう。

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