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【徹マガ・スペシャルインタビュー】森哲也(フットボール批評編集長)「志を持った媒体であり続けないといけない」(その2)

text by 宇都宮徹壱 photo by Tete_Utsunomiya

「絶望的に売れなかった」震災特集号

――確かにそうですね。それにしても、それから編集長を8年も続けたのは単純にすごいと思いますよ。最初は季刊でしたが、52号からは隔月になりました。結果として20号を担当したわけですから。その中で、今まで最も成功した号をあえてひとつ選ぶとしたら、どうでしょう?

「毎号作っていて、大成功っていうのはないですね。その中でも、最初の『オシムを殺すな』は、決して出来がいいというわけではないけれど、いろんなメッセージがつまった号ということで印象が残っていますね。あと、数字的に最も売れた号ということでは『10年後も残るクラブ、消えるクラブ』(43号)というのも印象に残っていますね」

――逆に、あまり売れなかった号というと?

「売り上げ的なことでいうと『3.11』直後の震災の号(「日本のサッカーは誰のものか」=51号)は、絶望的に売れなかったですね。もちろんやる意義は十分にあったんですけど。もっとも、反響はめちゃくちゃ大きかったのもあの号でした」

――難しいですよね。編集長として、もちろん数字は気にしなければならないと思いますけれど、その一方で「今、何を出すべきか」というものも考えなければならない。

「そうですね。商業誌である以上、数字というのはやはり大事です。ただ、そうは言っても、雑誌としてのテーマ設定というものも大事だなと思っています。『サッカー批評』としての個性をしっかり打ち出していかないと、今の時代は興味をもってもらえないし、買ってもくれない。その意味で、僕が最初にやった『オシムを殺すな』は、そのバランスが図らずもうまくいった号だったと思っています」

――なるほど。ただ、当時はそんなことはほとんど考えずに作っていたんですよね?

「ええ、失敗すれば雑誌そのものがなくなるわけですから、本当に必死でした」

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