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【徹マガ・スペシャルインタビュー】森哲也(フットボール批評編集長)「志を持った媒体であり続けないといけない」(その2)

text by 宇都宮徹壱 photo by Tete_Utsunomiya

批評性とマーケティングの両立の難しさ

――亡くなった真井さんからは、いろんな物を教わったと思うんですけど、最も今に活きていていることって何ですか?

【徹マガ・スペシャルインタビュー】森哲也(フットボール批評編集長)「志を持った媒体であり続けないといけない」(その2)
【写真:(C)Tete_Utsunomiya】

「やっぱりいい物を作ろうという志ですかね。先ほど言いましたように、テーマ設定と数字との両立って確かに難しいですけど、真井さんは常に志をもってぶれなかった。それはあの時代の編集者だからかもしれないけれど、そこの部分は最も影響を受けました。ただ、今の時代にそういったものを自分が後輩に伝えることができるかというと、ちょっと難しいものがあるかもしれません」

――ただ、森さんの頑張りがあったからこそ、その後も『サッカー批評』は続いて、今度の『フットボール批評』へとつながったわけですよね。あれから8年が経過して、サッカー専門誌というか紙媒体そのものが非常に厳しい状況の中にあるわけですが、真井さんと初代編集長の半田さんが築き上げてきたポリシーが、何度かのリニューアルを経ながらもしっかり受け継がれていることについては、もっと評価されていいと思います。

「そういっていただけるのは嬉しいですが(笑)、それでも一番大変だったのは『サッカー批評』という雑誌を立ち上げた真井さんと半田さんだったと思いますよ。ああいうゴリゴリの批評誌を出すのって、マーケティング的には商業誌としてかなり難しい判断だったと思います」

――まあ、そうですよ。ただ一方で、創刊した98年当時は、まだまだ雑誌の世界に活気があった時代ですよね。しかもW杯初出場があって、2002年への期待感もあって、追い風のようなものは間違いなくあったと思うんですよ。

「しかも後藤健生さんをフランスやアルゼンチンに連れていったりして、今では考えられないですよね(笑)。でも、ものすごく世界観の広がりは感じられました」

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