サッカーについての思考を深め、チームづくりの感覚をも体現する『ベスイレ+』

　つまり監督の日々をトレース、濃縮して、ゲームのフローチャートに載せているようなものだ。監督の脳内やクラブハウスに設けられている監督室の概念は「チーム」画面でよく表現されている。どこかのクラブに務め、出入りする人間が納得するだろうリアリティがある。

　「練習試合」でチームの状態を把握したり、試合日程やチームのスケジュールに則った進行も、週末のスタジアム以外はクラブハウスや練習場と家の往復になるサッカー監督の感覚をよく再現している。

　監督生活シミュレーター的な面だけでなく、ゲーム性の部分にも抜かりはない。戦術やフォーメーションを決めて実践していくのも楽しいが、見た目にも嬉しいのは、カードゲームの要素が採り入れられていることだ。この度、香川真司が所属するドルトムントなど新しい選手カードが多数導入されたが、カードを集めて配置する喜びは確実にある。そしてこうしたカード集めの最中にも、かつての著名選手がコーチのカードとして出現することで、プレイヤーは彼らをもスタッフとして扱う監督の立場なのだと再確認できる。サッカーファンにとって『ベスイレ+』の仕掛けた穴は深く、網は広い。

　今秋のバージョンアップによって選手スキル（個）は戦術（組織）との兼ね合いで発動するようになった。そうした個を活かす戦略を組み立てることもまた楽しい。

　旧バージョンにあった戦術カードはスタイルカードに一新され、監督が志向するスタイルをもとに戦術、フォーメーション、選手をフレキシブルに入れ替えていくことになる。
　ここまで述べてきたように、チームスタイルは試合までに身につけ、試合になればそれを適宜変化させていくもの。試合のシステムと演出にパワーアップを施す新バージョンとなった『欧州クラブチームサッカーBEST☆ELEVEN+』は、準備と試合の両面で監督の勝負が成り立っている事実を、あらためて白日の下にさらしてくれる。

　楽しみながらサッカーについての思考を深め、チームづくりの感覚をも体現する。『ベスイレ+』は新しい切り口のサッカーゲームなのである。