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宗教とビジネスとスポーツ。レアルやバルサも恩恵。イスラムと密接に結びつくサッカー界

text by 山本美智子 photo by Getty Images

マドリー、バルサのスポンサーにもアラブマネー

 個人的には、アジアやアフリカ、ヨーロッパと様々な国の人々が文化や肌の色を交えて、観客席を埋めている光景が好きだ。サッカースタジアムという一つの容れ物が、国境や社会的制約を90分の間は超えさせ、スポーツという共通の楽しみを分かち合う場となるのは、有意義かつかけがえのない経験だと思う。

 スタジアムというのは、ある意味一つの非日常的空間であり、そこは政治の枠組みからは一歩離れたゾーンであって欲しいと思う。かつて、フランコ独裁政権時代にカタルーニャ語が弾圧されても、カンプノウスタジアム内では、人々がカタルーニャ語を叫び、スタジアムが治外法権となっていたように。

 もとい、アラブ系の観光客がスタジアムに増えたのには、理由がある。現在、アラブマネーとスペインリーグが切っても切れない関係にあるからだ。それは、スペインリーグを牛耳っているといっても過言ではないビッグ2、レアル・マドリーとFCバルセロナのスポンサーが何より顕著に物語っている。

 レアル・マドリーは、アブダビ国立銀行と今季からスポンサー契約で合意。その目的は、中東への市場拡大だ。アラブ首長国連邦の7割以上がムスリムであることを考慮して、レアル・マドリーのクラブ章旗に含まれていた十字架を外した新しいロゴを発表し、クラブ史上初の出来事にメディアを巻き込んでの大騒ぎになったのは、記憶に新しい。

 将来的には、サンティアゴ・ベルナベウの名称も、スポンサーが変えることになっているが、そういった条件を飲むことで、この先20年間、4億ユーロ(約667億円)が毎年手に入るのなら、その程度の妥協はお手の物だ。

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