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酒井高徳がHSV移籍に秘めた決意。葛藤の末に下した決断

text by 本田千尋 photo by Getty Images

酒井高徳、ドイツで新たな挑戦へ

酒井高徳がHSV移籍に秘めた決意。葛藤の末に下した決断
HSVのブルーノ・ラッバディア監督【写真:Getty Images】

 HSVを含めた複数のオファーを前に、酒井は考えに考えた。悩んだ。かつての恩師であるラッバディア監督の存在、出場機会確保の可能性…。どういったチームがいいのか。仮に試合に出ることが出来なかったらどうするのか。

 特に決め手があった訳ではない。様々な要素を「全体的に考えた上で一番可能性があるチーム」が、HSVだったのである。

「攻撃も守備も自分の出来ることをしっかりやる。その他のところは周りとコミュニケーションを取るっていうのを、もう一回やれたらなっていうのを考えています」

 残留争いをするシュトゥットガルトのためにどんな自分が必要なのか。考え過ぎて失ったシンプルなプレーも、酒井が取り戻そうとしていることだ。

「思い切って、というところは基本になると思います。チームとしてもちろんこういうチームだからこうしなきゃいけないっていうのはあるんだけど、ただやっぱり、自分の出来ることをしっかりやることが大事なのかなと思う」

 アウクスブルクとの決勝では、酒井が自ら認めるようにプレーに安定を欠いているところはあった。それでも、43分には「思い切って」上がり、右サイドを抉って果敢にチャンスを演出した。折り返されたグラウンダーのクロスをアースランがダイレクトでシュートを打つ。ボールはバーを直撃した。

 HSVはアウクスブルクを2-1で下して、優勝する。試合後の表彰式では、新たな仲間たちに囲まれて、酒井の笑顔があった。

 前に、前に――。舞台をハンブルクに移して、酒井高徳の挑戦は続く。

【了】

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