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本田を意識せず――。星稜快進撃を支える大橋滉平、G大阪での挫折をバネに抱く大志

text by 藤江直人 photo by Yosuke Koga , Hiroyuki Sato

河崎監督が乗り出した、チームのメンタル改革

 春先は波に乗れなかった星稜は、それでも名門の意地を見せる。3回戦で敗退したものの、夏のインターハイにも出場。選手権連覇へ向けて士気が上がってきたところで、河崎監督からこんな言葉を投げかけられた。

「お子ちゃまチーム」

 その意図を、56歳のベテラン監督はこう明かす。

「僕が復帰したときは自分勝手なプレーばかりしていたんですよ。1年前にやっとできたチームが半年くらいでこんなにも変貌しているのかとびっくりしまして」

 選手権への出場をかけた石川県大会と並行しながら、河崎監督はチームのメンタル改革に乗り出す。繰り返されたのは、徹底した対話だった。

「君のプレーが、チームにどれだけマイナスになっていると思うのか」

「この場面では、こんなプレーをしたらどうなのか」

 17年連続の選手権出場権を獲得し、組み合わせも決まった後の12月に入ると、意図的に全国の強豪校との練習試合を設定。苦戦を強いられるなかで、その原因を選手たちに尋ねては自問させた。

「厳しいゲームのなかでテーマを与えていくと、必然的に頑張る、相手を追いかけることの意味がわかってきたといいますか。今年はキャプテンの阿部と大橋で戦っているようなものですけど、あの2人もボールをもって一人で行くようなところがありました。それをシンプルにプレーするようにさせた、ということです」

 目が覚めた思いがした。最後の冬へ集中するあまり、視野が狭くなりかけていた自分に大橋は気がついた。河崎監督の不在時に、木原力斗コーチと交わした約束を思い出した。

 自らが一番の汗かき役になる。攻守両面で走り回って、ボールをもらってはたいて、中盤の底からでもゴールに絡む。泥臭く、それでいていぶし銀の輝きを放つプレーが、ボランチに求められる唯一無二のプレーだった。

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