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ペップはシティを“バルサ化”するのか? 円環する“アヤックス・スタイル”の系譜

text by 西部謙司 photo by Getty Images

ペップのシティ行きにより、源泉へ回帰する伝統のスタイル

 レイノルズはサッカーの伝道師だったといえる。2つの偉大な代表チーム(オーストリアのヴンダーチームとハンガリーのマジック・マジャール)の生みの親となったジミー・ホーガンや、スラビア・プラハで25年もの長期政権を敷いた“スコティッシュ・ジョニー”・マドンなどと同様、真のサッカーを大陸に根づかせる役割を果たした。

 レイノルズ→ミケルス→クライフ→グアルディオラ。英国→アヤックス→バルセロナ→ミュンヘン。この流れは、どうやら源流である英国へ戻るようだ。グアルディオラとマンチェスター・シティの3年契約が明らかになった。

 おそらくペップにとってプレミアリーグ挑戦は規定路線だと思う。バルサの絶頂期を築いた以上、スペインに居場所はない。リーガ・エスパニョーラは2強リーグなので、ペップを雇うに相応しい戦力と財力を持つクラブはバルサのほかにレアル・マドリーしかなく、ペップにその選択肢はないに等しい。

 監督にとって最大のチャレンジはプレミアだ。最高の年俸だけでなく、少なくとも5つのビッグクラブ(マンチェスター・ユナイテッド、マンチェスター・シティ、アーセナル、リバプール、チェルシー)が覇を競う、最もチャレンジしがいのあるリーグだから。

 ただ、その前にドイツでワンクッション挟んだ。バイエルン一強のブンデスリーガを確実に制することで、バルサあってのペップではなく、世界一の監督として乗り込める。

 気になるのは、ペップはどうやってシティをシティ化するのか。シティにはバルサやバイエルンのような王者の記憶がない。遠い昔か、ごく最近の中東マネーでかき集めたチームしかない。ペジェグリーニ監督がかなり地ならしをしてくれたとはいえ、もしかすると器そのものから作る初めてのケースになるかもしれない。ただ、シティは美しいサッカーの伝道の終着地として相応しい。

 ジャック・レイノルズはシティの選手だった。1試合も出場していないけれども。

【了】

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