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カタール、W杯準備は順調か? ホスピタリティと労働環境。知られざる舞台裏【潜入レポート】

2022年のFIFA W杯の開催国カタール。その準備に際して、スタジアム建設に携わる労働者が、「劣悪な環境に置かれている」と指摘する一部欧州メディアがあったが、それは実態に即したものなのだろうか。現地カタールに潜入し、その深層を探った。(文:森本高史)

text by 森本高史 photo by Takashi Morimoto , Supreme Committee for Delivery & Legacy

「劣悪な労働環境」という報道は事実か?

ハッサン・アル・タワディ氏(右から2番目)【写真:Takashi Morimoto】
ハッサン・アル・タワディ氏(右から2番目)【写真:森本高史】

「全ては順調に行っている」

 2022年カタールW杯組織委員会専務理事を務めるハッサン・アル・タワディ氏は、2月10日世界各国のスポーツ関係者を対象に行ったW杯開催準備状況視察ツアーにて自信満々に語った。

「皆さんに特に強調したいのが、スタジアム建設労働者について。一部メディアから『水と食べ物を満足に与えていない劣悪環境』と批判され続けてきたが、それはねつ造に過ぎない。我々は、労働者に対し、世界基準で最高の環境を与えている」

 スタジアム建設は、多大な疲労、そしてときに危険を伴う肉体労働である。「だからこそ、労働者を最大限にケアしなければならない」とアル・タワディ氏は力説した。

 カタールには労働者が暮らす地区がある。場所はカタールの首都ドーハの中心部から車で30分ほどの郊外。名前は「レイバー・シティ(Labour City)」、その名の通り労働者が暮らす地区だ。今回はこの地区を現地視察した。

 アパートは、スペースの関係で個室が与えられているわけではないが、2人もしくは3人の共同部屋でカーテンが敷かれていることで、最低限のプライバシーは保護されている。そしてそれぞれの棟には食堂が設置されており、1日3食提供されている。

 食堂で提供されているのはチキンカレー、マットン(羊)カレーだ。労働者の大半は、インド、バングラデシュ、パキスタン、スリランカ、ネパールなど南アジア諸国出身であるため、彼らにとっての国民食が出されているということだ。

 余暇活動も充実している。フィットネスジムには最新の器具が備えられているし、卓球台やビリヤードに興じることもできる。棟によってはプールが設置されているところすらある。

 さらに、カタールW杯組織委員会は、2万人収容のクリケット場を建設している。プロチーム用に建設されたものではなく、労働者専用のスタジアムだ。週末にはこちらでクリケットの大会が開催され、クリケットを愛する労働者たちが、大勢の観客の前でプレーしている。

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