自滅した常連組。アーセナルは優勝争いから脱落
対照的にユナイテッドでは、ルイス・ファン・ハール監督が「報道によれば私はとっくに解雇されている」と嫌味を言うほどメディアに叩かれてきた。ファン・ハール体制は就任2年目にして「失敗」とみなされている。
トップ6圏内を維持していても優勝争いには参戦できず、試合内容は結果以上に不十分。ポール・スコールズやリオ・ファーディナンドといった元ユナイテッドの解説者が、中継スタジオで「ボロボロ」、「バラバラ」などと古巣のパフォーマンスを嘆く様子は、街なかのパブで敗戦後に不満をぶちまけるファンの姿と変わらない。
だが、最もファンをがっかりさせたのはアーセナルだろう。リーグ順位は30試合を消化して3位だが首位との差は11ポイント。アーセン・ヴェンゲル監督は3月19日のエバートン戦(2-0)後に「優勝争いから脱落したとは思っていない」と語っているが、同日にロンドンの『イブニング・スタンダード』紙が行ったアンケートでは回答者の6割強に「脱落」と理解されている。
他のトップ4常連の躓きに乗じていれば、フィールド選手を補強せずに臨んだ今季には、育成重視のベンゲルならではと言える「優勝美談」が誕生するはずだった。黒星発進から立ち直ったチームは、得失点差ながら首位で年を越してもいた。ところが、年明け後は3ヶ月間で4勝のみ。それでもヴェンゲル更迭論は行き過ぎと思えるが、ファンの失望は当然。2004年以来となるプレミア優勝を実現する絶好のシーズンを単なるトップ4で終えようとしているのだ。
いみじくも「今季は誰も優勝したがっていない」と言っていたのは、自軍が勝ち点ではアーセナルと並んで前半戦を終えた当時のラニエリ。常連が無様に自滅した優勝争いを美しく見せてくれているレスターの指揮官は、今季タイトルレース評も言い得て妙だ。
(文:山中忍)
【了】