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【レスターはなぜ強かったのか?―2】岡崎に支えられた得点王ヴァーディ。“斜め”が生んだ脅威の決定力の秘密

貧弱な攻撃バリエーション。来季は今季より厳しく……

レスター分析
レスターがいかにロングボールを使用していたか分かる図。プレミアリーグにおいて異質と言っていい。

 他の攻撃の選択肢はお世辞にもいいとは言えない。例えばGKのパント。GKはセンターFWやMFが適切な位置についていない状態で、2人のセンターFWの頭上に叩き上げる。そのため、1対1に持ちこむには密集しすぎているため、リバウンドに注力する必要がある。

 また、セットプレーでもヘディングに強いフートとモーガンの2人以外に別の特定の戦術に頼ることはない。例外は、フクスのスローイン。彼がボールを投げ入れると、クロスパスとほぼ同様の距離と速度の効果が得られるため、数少ない意識的に使われる武器となっている。

 大半の人がレスターはクリスマス後には下落し、リーグ中位に後退すると予想していた。ところが、予想を裏切り、ラニエリと選手たちは喜びに沸いた。選手のほとんどは、体調を良好に維持し、このイタリア人監督は彼の勝ち続けるシステムに手を加えなかった。

 その上、レスターへの対抗策に他チームの一部が難色を示したことも後押しした。レスターの成功は自身の成果と他のチームの失敗の結果と言うこともできる。

 果たしてレスターは来季どこまでいけるだろうか。オーナーであるキングパワーは、喜んで巨額の報酬を差し出すだろうが、来季は上手くいかない可能性が高い。

 フォックスたちはCLのレベルの高い競争での成功を求められる。加えてリーグでは、新しい監督(ペップ・グアルディオラ、ジョゼ・モウリーニョ)のもとで、新しいやり方、またはやっとクラブに定着した監督(ユルゲン・クロップ)の影響力を満喫するやる気に満ちたチームと戦わなければならない。

 もちろん、守備に重きを置き、全ての期待を上回る結果を残してきたアトレティコ・マドリーという希望もある。だが、アトレティコはレスターよりずっと才能のある登録選手が控えていることは忘れてならない。

 厳しい見通しを述べたが、彼らのシンプルなサッカーにプレミアリーグ全体が大きな混乱に陥ったことは紛れもない事実である。たとえレスターがプレミアリーグの上位3分の1から後退することになったとしても、彼らの2015/2016シーズンの実績は、歴史に刻まれる出来事と言って間違いない。

(文:コンスタンティン・エッケナー)

※当コラムはサッカー分析サイト「Spielverlagerung」に掲載されたものです。著者であるコンスタンティン・エッケナー氏の許諾を得て翻訳・編集しています。

【了】

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