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EURO2016 8年前

ウェールズ代表の「覚醒」を支える苦闘の歴史。英雄の死を乗り越えた“ドラゴンズ”の野望【東本貢司の眼識】

シリーズ:東本貢司の眼識 text by 東本貢司 photo by Getty Images

ギャリー・スピードの死。幻の英雄が残した遺産

スピード
謎の死を遂げた元ウェールズ代表監督のギャリー・スピード氏【写真:Getty Images】

 改めて当時の錚々たる主なメンバーを列挙してみれば、それも納得していただけるはず。ライアン・ギグス、ジョン・ハートソン、クレイグ・ベラミー、サイモン・デイヴィス、ロビー・サヴェイジにギャリー・スピード!

 そう、ギャリー・スピード。代表監督就任から一年にも満たない2011年11月26日、親友アラン・シアラーらとTVに出演した翌早朝、自宅ガレージで謎の自殺(事故死ともいわれる、真偽は今もって不明)を遂げたスピードへの、深い追悼と尊敬の念こそが、現チームに有形無形の力をもたらしていることもおさえておきたい。

 なんとなれば、その遺産の一つが、当時弱冠21歳のラムジーを代表キャプテンに抜擢したことであり、監督クリス・コールマンが、今回のユーロ本大会初出場が叶った直後に「この感動をギャリーに捧げたい。彼あっての我々であり、喜びなのだから」と、涙ながらに述べたほどだからだ。

 準々決勝で対決するベルギーは奇しくも予選で互角に渡り合った相手。これを、運命のめぐり合わせと言わずして何と言おう。ウェルシュ・イレヴンに告ぐ。全力を出し切ればそれでいい。独り悲運を背負って逝った、幻の英雄ギャリー・スピードのためにも。

(文:東本貢司)

【了】

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