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EURO2016 8年前

スロバキア、堅実な強化策が結実。W杯・EUROでの決勝T進出。基盤作った育成の長期プラン

text by 小川由紀子 photo by Getty Images

声援を送り続ける観客、全力を出し尽くす選手

逆転が絶望的な状況となった2006年W杯予選プレーオフ、スペイン戦でもスロバキアの選手は気迫を見せ続けた
逆転が絶望的な状況となった2006年W杯予選プレーオフ、スペイン戦でもスロバキアの選手は気迫を見せ続けた【写真:Getty Images】

 そしてブラチスラバでの第2レグ。11月のこの日、試合開始時刻には冷たい雨が降っていた。それなのに、現地サポーターは陽気に太鼓を鳴らしながら続々とスタジアムに詰めかけて、場内は大盛況だった。試合はスロバキアが先制したが、71分にダビド・ビジャに同点ゴールを奪われ1-1。残り20分で、総計2-6からひっくり返すのは厳しかった。

 ところが、その状態でもなお、サポーターはそぼ降る雨の中必死の応援を続け、選手たちもまた、少しも諦めることのなくボールを追い続けていた。

 あれは80分を過ぎたころだっただろうか。時間稼ぎをしたいスペイン側が放ったロンボールがサイドラインめがけて飛んでいった。とうてい届きそうにないルーズボールだ。しかし気付くと一人の選手が懸命に追っていた。彼はボールめがけてスライディングし、体ごと滑ってピッチの外へ。その瞬間、噴水のようにザッと水しぶきが上がった。

 そして観衆も、彼のナイスファイトに温かい拍手を送った。その光景を見てふと思った。この国は絶対に強くなる、と。

 それからちょうど10年後、今大会の予選でスロバキアはスペインと同組になった。アウェイでは0-2で敗れたが、ホームでは2-1で彼らを破り、グループ2位でEURO行きの切符を手にいれた。

 その前に、2010年のワールドカップでも彼らは初出場を果たしている。あの雨の中のプレーオフは、次への布石だったのだ。この大会には、チェコの出場は叶わなかった。解体から17年めにして、過去の遺産に頼って伸び悩んでいたチェコを、0からスタートしたスロバキアが追い越したのだ。

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