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EURO2016 8年前

スロバキア、堅実な強化策が結実。W杯・EUROでの決勝T進出。基盤作った育成の長期プラン

text by 小川由紀子 photo by Getty Images

首都クラブが果たした快挙、CL本戦出場

2005-06シーズンのCLでアルトメディアはアドリアーノらが在籍していたインテルなどと同グループに入り健闘を見せた
2005-06シーズンのCLでアルトメディアはアドリアーノらが在籍していたインテルなどと同グループに入り健闘を見せた【写真:Getty Images】

 そんなスロバキアのサッカーにスポットライトが当たったのは、05-06シーズン。首都ブラチスラバのクラブ、アルトメディア(現ペトルジャルカ・アカデーミア)が、チャンピオンズリーグ本戦出場を果たした年だ。予選の一回戦から勝ち抜いて本戦出場という快挙を成し遂げたのは、過去にも彼ら以外にリバプールしかいなかった。

 本戦でも彼らは奮戦し、インテルにはホーム、アウェイとも敗れたが、ポルトには1勝(しかも敵陣で0-2から3-2の逆転勝利!)1分け、レンジャーズには2分けで、グループ3位で大会を去る健闘ぶりだった。

 その最中に、アルトメディアを訪れた。ブラチスラバは落ちついた居心地の良い街で、旧市街は車が通行できないようになっているから、可愛らしい街並みはまるでディズニーランドの中みたいだった。しかしアルトメディアのグラウンドは、そんな観光地と川を挟んだ反対側の、うら寂しい地区にあった。

 彼らはスタジアムを練習場としても利用していた。中に入るとスタンドは先客で賑わっていたが、それは野良ニャンコ軍団だった。30匹くらいはいただろうか。彼らに見守られながら、アルトメディアの選手たちは実に楽しそうにボールを蹴っていた。見るとグラウンドは見事に穴だらけ。世界地図のように、あちこち芝がはげて土がむきだしになっていた。

 チャンピオンズリーグに出場するレベルのチームで、このような場所で練習しているところはまずないだろう。ピッチが剥げているなどもってのほか。それどころか、人工太陽をあてて芝を管理したりと、どこもグラウンドのクオリティにはお金をかけている。それがプレーに影響するからだ。

 アルトメディアの選手たちは、そんなことよりもボールを蹴っているだけで楽しくて仕方がない、といった感じでハツラツと汗を流していた。

 この時チームを率いていたのが、スロバキアのレジェンド、ウラジミール・ヴァイス監督だ。現役時代ミッドフィールダーだった彼は、解体後、スロバキア代表としてプレーした最初の試合でゴールをあげたスロバキアサッカー史に残る人物だ。

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