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PR記事 7年前

“戦術的”になったプレミア。リーガは3強から混戦へ。最高峰リーグで見られる一大変化

text by 海老沢純一 photo by Getty Images

盤石のはずのシティ。なぜ苦戦したのか?

 第25節までの平均ボール支配率は60.6%とリーグトップを記録しているものの、得点数は同4位の51得点、失点数は同7位の29失点となっており、バルサやバイエルン時代のような圧倒的な数字とは程遠い。

 さらに、ここまで最も高い支配率となっている77.9%を記録した第15節レスター戦では、FWジェイミー・ヴァーディーにハットトリックを決められて2-4で敗戦を喫している。

 グアルディオラの苦戦の要因は「イングランドのサッカー」だろう。イングランドは元来、4-4-2の両サイドに強力なウインガーを置き、ドリブルやロングボールを駆使して縦にスピーディーな展開で魅了した。

 時代を経て変化を遂げた現在でも根底にはそのアイデンティティがある。観衆はスピーディーでテンションの高い試合を望み、シティのライバルたちはそれを実践する。

 アルゼンチン人のポチェッティーノ監督に率いられるトッテナムとアウェイで対戦した第7節では、ホームチームの完璧なプレッシングと鋭いカウンターによって0-2と就任後初黒星を喫した。この一戦はその後のペップ・シティの苦戦を予感させるものであり、現実のものとなった。

 問題は外だけではなく内側にもある。シティは国外出身の選手が大半を占めるものの、やはりイングランドのチーム。そこに緻密なグアルディオラのサッカーを浸透させるには相当な時間がかかる。

 今季に向けて獲得したイングランド人DFのジョン・ストーンズは、ビルドアップに特化したセンターバックでグアルディオラ監督好みの選手ではあるものの、最も重要な守備の強さや空中戦能力、集中力が致命的に欠けている。

 リバプールを率いるクロップ監督は、かつて“ゲーゲン・プレッシング”はグアルディオラ監督の「守備の部分」のみを参考にして作り上げた表裏一体のものであることを明かしている。

 クロップ監督のチームの特徴はスタッツにも現れており、支配率が低いほど勝率が上がり、敗戦した試合では総じて支配率が高い傾向にある。

 今季のリバプールの結果を見ると、支配率49.3%の第1節アーセナル戦は4-3、47%の第5節チェルシー戦は2-1、43%の第19節シティ戦は1-0、44.1%の第21節ユナイテッド戦は1-1と50%を下回った試合は3勝1分けと無敗となっている。

 逆に敗れた第2節バーンリー戦は80.4%、第14節ボーンマス戦は60.2%、第22節スウォンジー戦は73.6%、第24節ハル・シティ戦は72.2%と、いずれも高い支配率を記録しており、いずれもボトムハーフの下位に沈んでいるチームが相手だった。

 つまり、上位勢に対しては「ボールを持たせる」ことができるため、自らのスタイルを出しやすく、逆に下位勢に対しては自らがボールを持つ展開を“強いられている”。

 クロップの苦戦の要因も「イングランドのサッカー」にある。そもそもボールを持つことを重視していないチームに“ゲーゲン・プレッシング”の効果は発揮しにくい。

 スタッツ上では真逆のグアルディオラとクロップのサッカーはイングランドの地で同様に苦しめられている。それは、表裏一体の存在であることを改めて示した。

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