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スポーツ産業過熱もプロ人材不足。東京五輪後見据えた「スポーツMBA」が担う大役

text by 舩木渉 photo by Getty Images, Wataru Funaki

スポーツにおける「世代効果」の意義

ーー人口自体が減ってしまうと、スポーツ産業が拡大しても市場自体が小さくなっていってしまいます。

 それでもスポーツをする人、あるいはスポーツに参加する機会が増えれば、急速に市場がしぼんでいくことはありません。スキーは一度廃れてしまいましたが、今は徐々に持ち直しています。18年ぶりに兵庫県に新しいスキー場がオープンしたり、インバウンドのスポーツツーリズムが増えるとか、いろいろ考えられますよね。ただ子供の数は減るので、カジュアルなスポーツ参加者を増やすことで、市場を安定させることは可能です。

ーースポーツをする機会や触れる環境が改善されていけば多少は維持できるのでしょうが、人口減少による影響は避けられない。

 実は、年齢層が上がるごとにスポーツ参加率が上がり、スポーツ消費も増えるんです。ゴルフは70代が一番お金を使っています。ただ、今の70代がゴルフをかなりやってきた層である一方、その下の世代がついてこない。いまはバブル期にゴルフをしていた団塊の世代が、定年退職して時間ができてゴルフを支えていて、その人たちがいなくなったら真剣に悩まないといけない。

ーー確かに自分の周りにはゴルフをやっている人はいません。

 スポーツ参加には「年齢効果」と「世代効果」があります。前者は年齢とともにするスポーツが変化するという仮説で、後者は、それぞれの世代で流行したスポーツは歳をとっても続けていくという仮説です。私は後者が正しいと考えます。ゲートボールは、戦後に時間を持て余した高齢者の間で流行ったチームスポーツですが、その世代がいなくなったらやる人は急激に減少しています。では、それに続く世代は何をやっているか。テニスやスキー、フットサルをやっているかもしれない。それぞれの世代で共有したスポーツはずっと続きます。

ーーでは、今の世代でサッカーが全盛になったら、大人になってもずっとやっているかもしれない。

 「世代効果」が正しければ、将来フットサル場が高齢者で溢れかえっている可能性もあります。下の世代が違うスポーツをやっていれば、今度はその流れがくる。サーフィンをやっている人はサーフィンをやるし、スキューバダイビングをやっている人はそれを続けるんです。

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