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スポーツ産業過熱もプロ人材不足。東京五輪後見据えた「スポーツMBA」が担う大役

text by 舩木渉 photo by Getty Images, Wataru Funaki

生涯スポーツの価値とビッグイベントの重要性

ーースポーツビジネスもその時代に生きる世代に合わせて常に変化させていかなければいけないということですね。

 それに加えて次に来るものを予測しなければいけません。我々は毎年トライアスロンの調査をやっています。競技者の平均年齢はだいたい40代前後で、始めたのが20代後半の人が多い。そういう人たちに「何歳までやりますか?」と聞くと、大部分の人が「何歳までも」と言うんです。「生きている限りトライアスロンをやるぞ」くらいのコミットメントがあるので、60代になってもトライアスロンを続けている可能性はありますよね。それは私の世代ではありえない話で、昔はトライアスロンなんてやらなかったし、マラソンも普通の人が走る距離ではなかった。でも今は関係なく、みんな平気でマラソンを走っています。フルマラソンは毎年のべ35万人くらいが走っていますからね。

ーーいまの若い人たちがやっているスポーツが近い将来、爆発的に流行する可能性がある。スポーツ参加が増えれば、スポーツ消費も増えて、スポーツ産業やスポーツビジネスがより盛んになっていくかもしれません。

 だからこそスポーツイベントの価値はすごく高くて、新しい施設ができるなどいろいろなきっかけになります。例えば2023年に女子サッカーW杯が日本開催に決まれば、新しいスタジアム構想がどんどん出てきますよね。

ーー2002年のW杯では実際にスタジアムがたくさんできました。ただ、あまりいい施設ができたとは言えません。そういった実際の大会を開催して得た知見を活かして、のちに長く使えるものを作らなければいけないのではないかと思います。

 そういった思想というか、物の考え方、ひとつのパラダイムを作らなくてはいけません。それは本を読んで学んで試験するようなものではなくて、ディスカッションしながら自分たちのプロジェクトとして何かを作り上げていくようなものです。そこで我々はスポーツビジネスの将来を担う人材を日本で育てるため、FIFAマスターを日本に呼んできたいなということでいろいろ交渉していました。ただ現状では費用面で難しいということでペンディング状態です。それでもFIFAマスター的プログラムの思想は我々も受け継ごうということで、「早稲田大学スポーツMBA Essence」を立ち上げました。

(編注:「FIFAマスター」とはスイスにあるスポーツ教育機関CIES(スポーツ研究国際センター)とFIFAが提携して運営している大学院のコース。スポーツに関する組織論や歴史、哲学、法律などを10ヶ月間かけて幅広く学ぶ。日本人卒業生は元サッカー日本代表の宮本恒靖氏ら9名。現在は元サッカー韓国代表のパク・チソン氏や、元なでしこジャパンの大滝麻未氏らが在学中)

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