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柴崎岳、1部昇格への正念場。PO初戦で「違い」作れず。勝利のために必要な割り切り

text by 舩木渉 photo by Getty Images

ホームでの2ndレグ、柴崎に期待されること

柴崎岳
柴崎岳には中心選手としてチームを勝たせる働きが求められる【写真:Getty Images】

 カディスがエースストライカーをベンチに置いたまま終盤まで戦っていたことも不気味な要素だろう。今季チーム最多の17ゴールを奪ったアルフレッド・オルトゥーニョは85分からピッチに立ったが、仮に試合開始から出場していたらテネリフェの失点はさらに増えていたかもしれない。

 反対にテネリフェは前線に核となるエースがいない。若手のアマス・ンディアイエが12得点、ホンジュラス代表のアンソニー・ロザーノが9得点と、両者ともにインパクトは薄い。特に後者はリーグ最終節に負傷を負ってコンディションに不安を抱えており、カディス戦は途中出場だった。

 このエース不在が中2日で迎える現地時間18日の2ndレグに響いてしまうかもしれない。そこで期待されるのが柴崎の貢献だ。

 現地時間10日に行われたリーグ最終節のサラゴサ戦で、テネリフェは昇格プレーオフを見据えたターンオーバーを実施し、ほとんどの主力に休養を与えた。その中でも先発していたのが柴崎、タイロン、ホルヘ・サエンス、ラウール・カマラの4人である。彼らへの指揮官からの信頼は厚いと見ていいだろう。

 テネリフェは15日のカディス戦で相手GKアルベルト・シフエンテスを脅かすようなチャンスをほとんど作れず、柴崎の役割も定まらないままとにかく後味の悪い試合を演じてしまった。ここでしっかりと現状を受け入れ、切り替えてより攻撃的に出るには、最もうまくいっていた時期の「柴崎トップ下起用」に賭けるべきではないだろうか。

 ひとつだけ懸念点があるとすれば、3月末の同カードで柴崎に出場機会がなかったことか。その試合は序盤から強度が高く、両チーム合わせて8枚のイエローカードが乱れ飛んだ。退場者が出なかったことが幸運だったほどの激しいゲーム。そういった展開になった場合、柴崎は試合から消えかねないことをマルティ監督は理解していた。

 ボランチ柴崎からの展開力に期待せずとも、彼より守備で貢献できるアイトール・サンスやビトーロからの配球も信頼に値する。ホームとアウェイで大きく戦い方を変えてくるであろうカディス相手に、柴崎の守備の負担を減らした上でトップ下として攻撃に専念させる環境を作ることができれば理想的だ。

 カディスは不利なアウェイで1stレグの「1点」を守ることも考えながらタフに戦ってくるだろう。そこで鍵になるのが柴崎のひらめきと技術、ゴールに直結するプレーだ。周囲との連係に不安がなくなった今こそ、その実力の全てを解放する時。彼自身のプレーでテネリフェを1部昇格へ導ければ、本当の意味でチームの一員となったことが証明される。

(文:舩木渉)

【了】

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