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【戸田和幸の眼】トッテナム、戦力充実で飛躍の1年に。証明した特大のポテンシャル【16/17シーズン総括】

シリーズ:16/17欧州主要クラブシーズン査定 text by 戸田和幸 photo by Getty Images, Natsuki Nakazawa

組織と個人のハイレベルな融合。指揮官の手腕光る

ポチェッティーノ
マウリシオ・ポチェッティーノ監督明確なコンセプトに基づいたチーム作りが結果にあらわれた【写真:Getty Images】

 さらに言うと(エデン・)アザールのように1人で困難な状況を解決してしまう超一流の選手がまだいないところも引き分け数が増えた一因かもしれませんが、ケインやデリ・アリのように超一流に足を踏み入れるところまできている選手はいるので、(クリスティアン・)エリクセンなども含めてどれだけネクストレベルに到達する選手が出てくるか。

 スパーズの選手たちは着実に成長していますし、まだまだこれから伸びていく個人とチームがあると考えれば上に記したものは決してネガティブではないと思います。才能溢れる素晴らしい選手が揃っていて、最高のトレーニング施設に、2018/19シーズンからは新スタジアムも完成します。今後継続して上を目指していくために必要なものは全て揃っていますから、ここからさらに上のレベルにたどり着ける選手が何人出てくるのか非常に興味深いですね。

 ポチェッティーノという監督はチェルシーでいうジエゴ・コスタやアザールのような組織としてプレイするために必要とされる要素を免除するようなことはせず、常にチームとしてコレクティブに戦うことを志向します。

 チーム全体に対し最低限のタスクをシェアさせながら攻守に渡り常に集団でプレーさせることを哲学として持っている監督なので、戦術的な規律を重んじる組織的なフットボールにおいてそれぞれ選手たちが持つ個性をもう一段階上のレベルに引き上げていけるかどうかが新シーズンのポイントになります。

 昨季で言えばチェルシーに勝った試合は特大のインパクトがありましたね。

 アザールの守備の緩さとアスピリクエタの身長という相手のウィークポイントを見事に突いての2得点、しっかりとしたプランを持っている監督だと思いました。また昨季はS級指導者ライセンスの海外研修でスパーズのトップチームの練習を見させてもらう機会がありましたが、非常に明確なコンセプトを打ち出し徹底した指導をする指導者だなと強く印象づけられました。

 ビルドアップからきちんと攻撃を組み立てることができて、ショートカウンターもできて、プレッシングもできる。複数の形を用意しながらハードにプレーできる魅力的なチームでした。加えて肉体的にも強い選手が揃っていますし、常にグループとしてプレーできる強みがあるので、誰か1人に依存することのないチームという言い方もできますね。

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