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PK戦、なぜ“ABBA方式”? 従来のキック順で生まれていた先攻の優位性

U-20W杯や8月6日開催のFAコミュニティーシールドでは、PK戦のキック順が従来の方式とは違っていた。「ABBA方式」と呼ばれるキック順を採用することのメリットとはなんなのだろうか。『PK 最も簡単なはずのゴールはなぜ決まらないのか?』(カンゼン)では、従来型のデメリットと、キック順変更のメリットが論じられている。一部を抜粋して紹介する。(文:ベン・リトルトン、翻訳:実川元子)

text by ベン・リトルトン photo by Getty Images

従来方式だと先攻チームの勝率が6割以上に

【表1】PK戦の先攻後攻による勝敗率。
【表1】PK戦の先攻後攻による勝敗率。

 なぜ後攻が不利なのか? パラシオス=ウエルタは212回のPK戦の2106本のPKを分析して、先攻のチームが勝つ確率が61%(後攻が勝ったのは39%)であることを発見した(表1)。「コイントスは勝率を五分五分から六分四分にする」と彼は言った。「先にPKを蹴ったほうが相手よりも22%有利になる」

 ワールドカップよりもチャンピオンズリーグの方が先行有利の度合いは高くなるが、違いはそれほどない。

 PK戦で両チームの公平性を高めるには、先攻が得る22%の優位性を小さくすることだ、とパラシオス=ウエルタは考え、そのための方法があると信じている。2012年に発表した論文「大会、公平性とプルーエ・トゥエ・モールス数列」で彼はこう書く。

「ABの順番がどちらかのチームの選手に有利に働くなら、次の回では順番を逆にすることでそれを補正できる」

 彼の考え方に最も近い方法をとっているのが、テニスのタイブレークだ。選手Aが1本目のサービスをとれば、選手Bは次から2回のサービスをとり、7ポイントを先取した(そして2ポイントリードした)方が勝者となる。サービスの順番は次のようになる。ABBA、ABBA、ABBA……。

 パラシオス=ウエルタは元の順番を途中で逆にすることで、「どちらかが潜在的に有利になる不公平を補正できる」と考える。彼が理想とするPKを蹴る順番は、ABBA、BAAB、ABBA、BAABである。

 4回を1セットと考えて、AとBが交互に最初と最後のサービス/キックをとるという彼の提案ではあまりにも複雑になりそうではあるが、サッカーにテニスのタイブレークのやり方を取り入れるとはるかにおもしろくなりそうだ。

 パラシオス=ウエルタは国際サッカー評議会の8人のメンバーにこの提案を送って、6人から返答をもらった。彼の提案はまだ検討中だそうだ。

(文:ベン・リトルトン、翻訳:実川元子)

【了】

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【目次】
第1章 イングランド病
第2章 オスロ解決法?
第3章 PKのDNA
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