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猶本光が流した涙。カップ戦決勝で味わった悔しさ…「最高の景色」を見るための決意

text by 舩木渉 photo by Getty Images

低迷した2年間。同世代は続々と代表に定着するが…

猶本光
試合後、ベンチに下がる際の表情から相当な悔しさがうかがえた【写真:舩木渉】

 ある後輩選手は、ジェフL戦後に「光さんは相当気合いが入っていた」と話していた。3年ぶりのタイトル獲得のチャンスでもあり、猶本にとってこれまでの遅れを取り戻すための重要な試合だったのかもしれない。

 猶本が脚光を浴びたのは、2012年に日本で開催されたU-20W杯だろう。当時、大会を放送したテレビ局が「美人選手が多い」などと、積極的に取り上げていたのをよく覚えている。その中心選手が18歳の猶本だった。

 その後、浦和Lでの出場機会確保に苦しんだが、初めて年間を通してレギュラーに定着した2014年になでしこジャパン初招集、そしてデビューを経験した。女子アジアカップの直前、5月8日に大阪のキンチョウスタジアム(長居球技場)で行われたニュージーランド女子代表との強化試合でなでしこジャパンデビューを果たす。

 しかし、それから継続的に代表から声がかかることはなかった。負傷によって万全なコンディションを維持できなかったことも原因のひとつとして考えられるが、U-20代表で共に戦った同世代の田中美南や横山久美、中里優、高木ひかりらがなでしこジャパンに定着していく一方、猶本はU-23代表での活動がメインになる。

 2016年も受難の1年だった。浦和Lが前半戦で6連敗するなど低迷したうえ、猶本自身も長期離脱でチームに貢献できず、プレーも年間を通して振るわなかった。12月になでしこジャパンの候補キャンプに招集されたが、満足のいくシーズンではなかっただろう。

 だからこそ今季にかける思いは強い。2017年4月に行われた国際親善試合のコスタリカ戦で高倉麻子体制で初めてなでしこジャパンに選ばれると、6月の欧州遠征(ベルギー戦、オランダ戦、7月末のアメリカ遠征(ブラジル戦、オーストラリア戦、アメリカ戦)にも続けて招集された。

 まだなでしこジャパンでは出場時間を伸ばせていないが、自信を深めたのか浦和Lでのプレーも昨年とは明らかに迫力が違っている。それだけに、今季ここまで取り組んできたことの集大成を披露するはずだったなでしこリーグカップ決勝の敗戦は、ただの負けではなかった。

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