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東京五輪の切り札に? 北欧で奮闘する20歳の“逆輸入”DF世川楓悟の知られざるキャリア

text by カルロス矢吹 photo by Getty Images

「東京五輪なんてこれまでは口に出せなかったけど…」

世川楓悟
フィンランドでは一般的なサーモンスープ、世川も毎週食べているという【写真:カルロス矢吹】

 そして前述の通り、活躍が認められて今季からフィンランド1部リーグのロヴァニエミへ移籍。複数のクラブからオファーを受けた中で自ら選択した、2部を飛ばしてのステップアップだが、その実現には欧州の最先端スカウティング機能が一役買っていた。

「『Instat』っていうサイトがあって、そこではサッカー選手のプレーが全部数値化されて評価されるんです。欧州ではどこのチームも登録していて、フィンランド3部でもラッペーンランタとヘルシンキ(昨季まで田中亜土夢が所属)のリザーブチームは動画をそこに送っているんです。その評価がなければ獲得しなかったと、ロヴァニエミからはハッキリ言われました。海外に出たら、日本人は助っ人外国人じゃないですか。『順応』じゃいけない、トライアルの時から『違い』を、圧倒的な力を見せなきゃいけないんです。そうじゃなければ、自国出身の若い選手を使うに決まってますからね」

 住んで2年目を迎えるフィンランドという国自体にも、世川は上手く適応できているようだ。慣れ親しんだ土地から、世川は次なるステップアップを、そして東京五輪を見据えている。

「フィンランド人って、日本人に似てると思うんです。シャイだけど、親切で、喋ってみたら結構オープン。みんな英語ができるから、練習でも監督は全体に英語で喋ってくれる。日本人が割と馴染みやすいリーグだと思います。みんな背は滅茶苦茶でかいですけどね。3部と1部じゃ全然違いますから、ロヴァニエミではまず90分間試合に出ることが目標です。ロングボールでも、繋ぐサッカーでも、フルで出してもらえればその中で結果を出す自信はあるので。

正直、東京五輪なんてこれまでは口に出せなかったんですけど、フィンランド1部に移籍してようやくスタートラインに立てた、目標に出来た感じはしてるんです。前にドンドン行く自分の色を出していけば可能性はあると思っているので、東京五輪をサッカー人生の中期目標として、どんどんステップアップしていきたいですね」

 海外での紆余曲折を経て、精神的なタフさを鍛えながらも、日本人としての特徴を大いに役立てている。2020年夏、世川は日本代表のユニフォームを纏い、新国立競技場の左サイドを駆け上がっているのだろうか。今季ロヴァニエミで活躍出来なければ、時間的に非常に難しいと言わざるをえない。だが、目覚ましい結果を残したら……?

 自身が述べた通り、世川楓悟のサッカー人生はここからがスタートなのだ。

(取材・文:カルロス矢吹、取材協力:Finland Kitchen Talo)

【了】

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