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プレミア、“殺人的”日程問題のジレンマ。疲労蓄積の弊害、天秤にかけられる収入

text by 山中忍 photo by Getty Images

ワールドカップの影響で年末年始は例年より1節多く

 一般的に、選手のリカバリー期間は2~3日が最適と理解されているが、W杯を控えてリーグ閉幕が早い今季は、クリスマス直前から年明けまでの2週間半の間に、例年よりも1節多い計5節を各チームがこなすことになった。

 疲れの癒えない肉体に異常が発生しても無理はない状況だ。加えて、心身両面の疲労に起因する反応の遅れやスピードの低下によって、苦し紛れのファウルが増えたり、ただでさえ激しい“プレミア流”のボディコンタクトがタイミングを逸したタックルとなったりすることにより、怪我を負う危険度が高まるとも考えられる。

 但し、単純に監督陣に同調してリーグ日程だけを問題視することはできない。プレミアリーグの公式声明にもあった通り、年末年始の過密日程は、仮に今季は「超」がつくレベルであったにしても、事前に所属20クラブの了承を得ているのだから。

 諸手を挙げて歓迎されたわけではないにしても、完璧な「妥協策」などあり得ないということで全クラブが合意済みのスケジュールであったことが、リーグ側から伝えられている。

 ウィンターブレイクの導入にしても、より軽度な過密日程の緩和にしても、「妥協」を図る際に選手の厚生と天秤に掛けられる対象はクラブの収入。より厳密に言えば放映権収入だ。

 プレミアでは、通年で「テレビ局がリーグ日程を決めているようなものだ」という監督陣の声も聞かれるが、彼らを好待遇で雇用しているクラブの主要収入源の1つは、リーグから分配される巨額の放映権料に他ならない。

 グアルディオラが、シティのSB総入れ替えだけに1億3千万ポンド(約195億円)を超える移籍金を費やすことができたのも、モウリーニョが、週間算にして50万ポンド(約7500万円)という推定年俸でアレクシス・サンチェス獲得をユナイテッド経営陣に求めることができたのも、“TVマネー”という軍資金があればこそだと言える。

 プレミア放映権料が3年毎の契約更新の度に過去最高額を記録している背景には、他の欧州リーグとは違って年末年始も休まないプレミアの“セールスポイント”がある。

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