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いわきFCが打ち立てるフィジカルの新基準。恐るべき「鍛錬期」経て開花する選手たち【いわきFCの果てなき夢】

シリーズ:いわきFCの果てなき夢 text by 藤江直人 photo by Editorial Staff

選手たちが畏怖の思いを込めて「鍛錬期」と呼ぶ期間

いわきFCのクラブハウス内にあるトレーニングジム「ドームアスリートハウスいわき」
いわきFCのクラブハウス内にあるトレーニングジム「ドームアスリートハウスいわき」【写真:フットボールチャンネル編集部】

 いわきFCの選手たちは原則アマチュアで、クラブハウスや練習場と同じ敷地内にあるドームの物流センター、ドームいわきベース(DIB)で午後は働いている。正確にはドームの子会社で、物流請負業務などを事業とする株式会社ドームユナイテッドの社員として生計を立てている。

 毎日の練習は午前11時半には終わる。クラブハウスで昼食を取ると、2階にある広大なロッカールームで昼寝に入る。ビジネス・パートナー契約を結ぶ、東京西川チェーンの有限会社ヤマキ寝具(本社・福島県いわき市)から提供されたマットレス「AiR」が並べられた光景は壮観だ。

「1年目だった2016シーズンは、DIBから『仕事中に寝ている選手がいる』と何度も怒られたんですよ。お金をもらっている以上はしっかり働かなければいけないんですけど、1年目は練習場もまだ完成していなかったので市内を転々としていて、そこから戻って急いでシャワーを浴びて昼食を取って、30分後から仕事となればどうしても疲れて眠くなってしまうので」

 DIBでの就業は14時。以前は19時で終えていたところを、昨年の秋からは18時までに短縮されている。栗原選手に刺激を受けた選手たちが、夕食を取った後に自主トレーニングに取り組む時間に当ててくれればという、田村監督をはじめとする首脳陣の配慮でもあった。

 夕方からは昨年発足したアカデミーU-15の練習が行われている。未来を担う子どもたちを見守りながら、田村監督は練習場と同じレベルにある、ガラス張りの「ドームアスリートハウスいわき」に視線を送る。いわきFCの選手たちが必死に汗を流す姿が、微笑ましく感じられた。

「いまはほとんどの選手が、夕食を終えた後に自主的に練習しています。どの選手がやっているのかまではチェックしませんけど、恵まれている環境だからこそ、自分から『変わろう』と思っている選手は必死に取り組むじゃないですか」

 加えて、1年間に数回、選手たちが畏怖の思いを込めて「鍛錬期」と呼ぶ期間が設けられる。昨年のハイライトは8月上旬から約5週間、ウエイトトレーニングやストレングストレーニングを週4回、時間も2時間半に増やして、フィジカルを徹底的に鍛えあげた。

 鍛錬期でもボールを使ったトレーニングはもちろんのこと、練習試合も頻繁に組まれた。昨年の8月を振り返れば、天皇杯全日本サッカー選手権の福島県予選決勝で快勝したJ3の福島ユナイテッドFCに、疲労で足が止まった後半15分以降に大量6点を奪われて惨敗している。

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