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いわきFCが打ち立てるフィジカルの新基準。恐るべき「鍛錬期」経て開花する選手たち【いわきFCの果てなき夢】

練習時間の6割から7割を、ウエイトトレーニングやストレングストレーニングにあてる――日本のフィジカルスタンダードを変えるという壮大な夢を掲げて、異端に映る挑戦を続けるいわきFCの選手たちは、実際にどのような日々を送っているのか。2018年はJ1から数えて6部に相当する、東北社会人2部南リーグを主戦場とするアマチュア軍団のなかには、日本サッカー界を担うポテンシャルを秘めた無名の若手選手が、力強さを融合させながらすでに台頭し始めている。(取材・文:藤江直人)

シリーズ:いわきFCの果てなき夢 text by 藤江直人 photo by Editorial Staff
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アメフト選手に示された理想のアスリート像

人工芝のサッカーコートとフットサルコートが整備された「いわきFCフィールド」
練習拠点となっている人工芝のいわきFCフィールド【写真:フットボールチャンネル編集部】

 まさに百聞は一見にしかず。いわきFCの選手たちがあ然とした表情を浮かべ、次の瞬間、目を輝かせ始めた光景を、強化・スカウト本部長を兼任する田村雄三監督(35)はいまでも鮮明に覚えている。

 昨年8月上旬、練習拠点としている人工芝のいわきFCフィールドは百花繚乱のにぎわいを見せていた。法政大学と東京大学の体育会アメリカンフットボール部がキャンプで訪れ、運営する株式会社いわきスポーツクラブの親会社、株式会社ドーム(本社・東京都江東区)の社員運動会も開催された。

 もちろん、いわきFCの練習も行われている。そのなかに異彩を放つ存在が加わっていた。アメリカンフットボールXリーグのIBMビッグブルーでプレーし、テレビ番組などで日本人離れした、驚異的な身体能力を披露していた栗原嵩選手が特別に招待されていた。

「ウチの選手たちがベンチプレスで上げるマックスがだいたい100キロなんですけど、栗原さんはその重さをウォーミングアップの段階からポン、ポン、ポンといった具合に軽々ともち上げたんですよ」

 苦笑いしながら、田村監督が当時を振り返る。NFLのボルチモア・レイブンスのキャンプに招待された経験をもつ栗原選手は法政大学出身で、現役時代にアメリカンフットボールの日本学生選抜のキャプテンを務めた、ドームの安田秀一代表取締役CEO(48)の後輩となる。

 そうした縁もあって招待された栗原選手のサイズは180センチ、85キロ。鍛え抜かれた上半身は隆々とした筋肉が美しいハーモニーを奏で、ワイドレシーバーのポジションを務めているだけに、ピッチに出ればいわきFCの誰よりも速かった。

 大きくて、強くて、そして動ける。日本のフィジカルスタンダードを変える――を合言葉に前例のない、もっと言えば異端に映るウエイトトレーニングやストレングストレーニングに励んできた先にある理想のアスリート像が、目の前で実際に躍動している。

 J1の北海道コンサドーレ札幌を撃破して痛快無比なジャイアントキリングを成就させ、3回戦で敗れるも清水エスパルスに善戦した昨年の天皇杯全日本サッカー選手権の戦いを介して、取り組んできた軌跡に自信と手応えが得られた。

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