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サッカー本大賞2018、「大賞」&「読者賞」は岩政大樹著『PITCH LEVEL 例えば攻撃がうまくいかないとき改善する方法』が受賞!

text by 編集部 photo by Kenzaburo Matsuoka

岩政大樹
サッカー本大賞2018の「大賞」と「読者賞」をW受賞した岩政大樹氏【写真:松岡健三郎】

 3月12日、神田明神会館にて第5回を迎える「サッカー本大賞2018」の授賞式が行われた。

 今回ノミネートされた12作品の優秀作品に賞状が授与された。その後、本年度の「サッカー本大賞」「翻訳サッカー本大賞」「読者賞」が発表された。

 選考委員の協議によって選ばれる「大賞」と読者投票によって選ばれる「読者賞」を『PITCH LEVEL 例えば攻撃がうまくいかないとき改善する方法』(岩政大樹著、KKベストセラーズ刊)が受賞した。受賞者の岩政大樹氏には盾と賞金、並びに協賛の猿田彦珈琲株式会社より記念品が贈られた。

 関東リーグ1部の東京ユナイテッドFCに所属する現役選手としてサッカー本大賞受賞者となった岩政氏は「(読者賞と大賞は)意味合いがどちらも違いますが、どちらも当然嬉しいことで、読者の方々にたくさん投票していただいたことも、この上ない喜びです。僕は今回書くことは初めてでしたけれども、書くことの専門家、プロの方々に表彰していただけるのは想像もしていなかったことですから光栄です」と受賞の喜びを述べた。

 ファジアーノ岡山時代の2年前に執筆活動を始めた岩政氏。選手としてではなく、書き手としての活動の中で見えてきたのは「僕自身のパーソナリティだった」と語る。さらに「そこを自分で確立したい、確立したいともがいてきて、選手としてという部分でももがいてもいましたけど、そこから何か自分でしかできないことを見つけていきたいと思う中で、いろいろなことを始めて、その中の一つが書くことでした」と、自己表現の手段としての執筆活動の意味を見出したことを明かした。

「これで僕が何かを勝ち取ったというようなものではないですし、自分自身書き始めたばかりですから、自分の中の素直な言葉を、これからも紡いでいけるようにしたいと思います。変に繕ったり、カッコつけたりせず、という思いはより強くなりました」

 今年は東京ユナイテッドの選手兼コーチとしてJリーグ昇格を目指す勝負の年であると同時に、書くことや喋ることで「伝える」という分野にも全力を注いでいくと岩政氏は語った。

「本は僕がサッカー選手として終わりに近づいてきたから『何か残るものを作りたい』という思いで書き始めて、書いてみたらこのようなもの(サッカー本大賞受賞)につながりました。大事なことは、自分がやると決めたことに対してどういう姿勢で挑むかだと思っていますから、これは書くことを始めたら素晴らしいとか、コーチをやったら素晴らしいとか、コメンテーターをやったらいいとか、そういう話じゃないんです。

とにかく自分がやると決めたことがある。他に何か一筋に絞ってやっている方もたくさんいるわけですから、(自分は)その人たちに負けない仕事量だったり熱量を持って、全部に(本気で)挑まなければ次につながっていかないと思っていますので、それを続けていくことですね。それを続けていきながらどうつながっていくかを見てみたいなという思いで、自分自身を見ています」

▽サッカー本大賞2018「大賞」受賞スピーチ全文

「ありがとうございます。こういうのを決して狙って書いたわけではないですが、非常に嬉しいです。書くことによって良かったことはたくさんあるのですが、一つは自分の幼少期やいろいろなことを思い出したことです。その中で今日もいろいろなことを思い出しました。

僕が小さいころ、賞状をもらって帰るとおじいちゃんが待っていてくれて、すごく喜んでくれました。おじいちゃんはこの1月に亡くなったんですけれども、そのへんが回り回ってこの賞につながった気がしています。母方のおじいちゃんに育てられましたので、母がおじいちゃんが亡くなってかなり塞ぎこんでます。

最近、書くことに一生懸命になったのはいつだろうと思い出したんですけれども、それがちょうど夏休みの読書感想文でした。両親は教師で、母が鬼のような教育者で、読書感想文を一度書いても提出させてくれないんですよ。それを3回、4回と書き直して、『これがダメ、あれがダメ』とダメ出しされて、僕が提出できるレベルになるまで出させてくれないという宿題がありました。

僕はそれ以外の宿題は1週間で終わらせる子供だったんですが、読書感想文だけはずっとやらされて憂鬱だった記憶がありまして、それを最近やっと思い出しました。それでやっと母親に読書感想文をやらされたことに感謝する気持ちになりました。

僕は小さいころから山口県の周防大島で育って、田舎でしたから、家族との絆とか、周りの人たちとの絆が深く、近い関係で育てられました。つながっていくものとか、回り回っていくものという意識がずっとあります。

サッカーにこれからもずっと関わっていくと思います。コーチなり、選手なり、書くことなり、いろいろなことを同時にやっていますが、この中から少しずつ、どのように未来の日本サッカー界につながっていくのか考えながら、そこに自分が立ち位置をとって、そして貢献していきたいと思っています。これからもこれを励みに頑張ります」

【了】

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