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いわきFC、選手に求める「ぎらついた夢」。J1から6つ目のカテゴリーで起こる熾烈な生存競争【いわきFCの果てなき夢】

シリーズ:いわきFCの果てなき夢 text by 藤江直人 photo by Editorial Staff

「サッカーにとことん打ち込める環境」だからこそ

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田村雄三監督【写真:編集部】

「1年ごとに陣容を見直すようにしています。1年間の体重や骨格筋量の変化も含めて全部データ化して、出場時間とゴールやアシストを含めたすべてをオフに行う話し合いの場で選手たちに見せて、納得させるようにしてきました」

 納得とは、要は2016年オフに14人、2017年オフには10人を数えた、クラブを退団していった選手たちを念頭に置いた言葉となる。新体制となった2016年から、いわきFCの選手たちはプロではなくドームの子会社、株式会社ドームユナイテッドの社員という形態を取ってきた。

 午前中に練習が行われ、午後には日本スポーツ界初の商業施設複合型クラブハウス『いわきFCパーク』や練習場『いわきFCフィールド』と同じ敷地内にある、ドームの物流センター『ドームいわきベース(DIB)』で、いま現在は午後2時から4時間勤務している。

 DIB内にある食堂『DNSパワーカフェ』では、ドームのもとで栄養が管理された「いわきFC定食」が朝昼晩と3食提供される。サッカーの成績が反映される年俸ではなく、DIBでの仕事の対価として給料が安定的に支払われ、個人事業主のJリーガーには見られない保証も社員として得られる。

 福島県の強豪・尚志高校から加入して2年目のDF高橋大河が「帰宅してからは洗濯機を回して、洗濯物を干したらすぐに寝ます」と苦笑いした一日のサイクルは、全員に共通している。試合日以外は一日24時間のすべてを、クラブハウスや練習場がある敷地内と近隣に借りている部屋で完結できる。

 しかも、クラブハウスの2階には、ドームが運営するトレーニングジム「ドームアスリートハウスいわき」がテナントとして入居している。最新鋭のトレーニング機器がそろう最高の環境のもとで、自主練習を含めて体の鍛錬に集中できる日々を、田村監督は「サッカーにとことん打ち込める環境ではあると思います」と言い、こう続ける。

「待遇面も含めて本当に恵まれている、と言ってもいいですよね。これほどまでにハード面が整っているクラブはそんなにないはずですし、ハード面と所属するカテゴリーの差がありすぎるのも事実と言ってもいいんですけど、それでもこの環境がすぐに用意され、我々に提供されたのは決して当たり前のことではないんだよと、選手たちには常々言ってきました」

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