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豊川雄太は「日本にない1トップ像」を追求する。目指すはスアレス、ベルギーで得た信頼と自信

text by 舩木渉 photo by Getty Images

豊川はストライカーになった

 オイペンには元ヘントのダニエル・ミリチェビッチや、エスパニョールなどで活躍したルイス・ガルシアといった経験豊富なパサーがいるものの、彼らのような中盤から効果的なパスはあまり出てこず、豊川にとってはもどかしい場面も多くある。

 それでも24歳のサムライはベクトルを自らに向け、「もっと動き出しの工夫が必要なのかもしれないし、動き出しはまだまだ磨けるところがあるし、体の使い方だったりね。いろいろあるので、すごく楽しみです」と、ストライカーとしての動きに磨きをかけていけばいいと考えている。

「いろいろなことをやっていますけど、こっち(海外)の選手は見ても分かる通り強いしゴツいので、どれだけ体をうまく使えるかというのも大事になってきますし、うまく体を預けてターンというか、ボールを流してそのままいくというシーンが今日(21節セルクル・ブルージュ戦)も何回かありました。ロングボールを前の選手がマイボールに出来たらデカいので、やっぱりそういうのは心がけています」

 1トップをやることで、プレーに幅が出てきたのは間違いない。これまでのように自らボールを持った状態からゴールに向かって仕掛けていくことだけでなく、どうやってシュートまで持ち込むか、あるいはいかにしてボールを呼び込むかといった、よりシビアな局面での駆け引きや動きの質をこれまで以上に求めていかなければならない。

 フットボールにおける一般論として1トップには体格に優れた選手が起用されることが多かったが、豊川の場合は慎重171cmと小柄で、常にフィジカル的に不利な状態で相手のセンターバックを上回る必要がある。そのための方策を、手を替え品を替え打ち続けなければゴールには近づくことすらできないのだ。

「やっぱり1トップにならないと身につかないところもあったので、今年1年、そういうところが身について良かったと思います」

 味方のクロスに対してDFと駆け引きして有利なポジションを確保し、ニアサイドに走り込んで相手より先にボールに触る。わざと空中戦で負けておいて、そのこぼれ球にいち早く反応して、そのまま相手をかわす。一度センターバックのマークを引き連れたまま中盤近くまで引いて、味方が最終ラインからのロングパスに飛び出すスペースを作り、再びフィニッシュを狙ってゴール前に走り込む。

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