マンU20億円の新星、ダニエル・ジェームズとは何者か。王者復権の旗頭に…そのプレースタイルは?

マンチェスター・ユナイテッドは、今夏の移籍市場で21歳のFWダニエル・ジェームズを獲得した。1500万ポンド(約19億8000万円)という移籍金からも期待の大きさがうかがえるが、そのプレースタイルはどのようなものなのか。これまでのキャリアとともに紹介する。(文:プレミアパブ編集部)

2019年08月05日(Mon)10時00分配信

text by プレミアパブ編集部 photo Getty Images
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特徴はなんといっても爆発的な加速力

ダニエル・ジェームズ
今夏にスウォンジーからマンチェスター・ユナイテッドへ加入したFWダニエル・ジェームズ【写真:Getty Images】

 マンチェスター・ユナイテッドは6月7日、スウォンジーからウェールズ代表FWダニエル・ジェームズの獲得を発表した。今夏のマンチェスター・ユナイテッドの最初の補強であり、移籍金は1500万ポンド(約19億8000万円)が支払われた。クラブの公式発表の5日後に加入動画が公開されると、ほどなくして21歳の童顔の若者に期待の声が寄せられた。

 昨シーズンのジェームズは、プレミアリーグの一つ下である2部リーグのチャンピオンシップでスウォンジーの一員として、33試合出場4ゴール7アシストの結果を残し、FAカップでは5試合出場1ゴール1アシストを記録している。

 中でもFAカップ5回戦のブレントフォード戦で魅せた圧巻のスプリントからのゴールはとても印象的だった。自陣から相手のボールを奪うと一気にゴールへ駆け出し、2人のDFを置き去って冷静に得点を記録。その姿はまるで全盛期のアリエン・ロッベンさながらだったのである。

 ダニエル・ジェームズの特徴はなんといっても爆発的な加速力である。全力でピッチ上を駆け巡る彼のプレーは圧巻で、昇格を目指していたスウォンジーの動力源として勝利に貢献した。当時クラブの監督だったグラハム・ポッターは「彼はチャンピオンシップのレベルを超えている」として、その溢れんばかりの才能を称賛している。

 現在、プレシーズンマッチを5試合終えたマンチェスター・ユナイテッドだが、ジェームズは全試合でスタメン出場した。主に両サイドのウイングとして出場し、ゴールこそ無かったものの随所に輝きを放つプレーを魅せている。絶対的な即戦力として数えるには時期尚早だが、彼はトッププレイヤーへの道を一歩ずつ進んでいるようだ。

少年時代のアイドルはギグス

ライアン・ギグス
D・ジェームズが憧れていた選手はマンUのレジェンドでもあるライアン・ギグス氏【写真:Getty Images】

 ジェームズは1997年の11月にヨークシャー州のビバリーに生まれた。両親が文武両道を望んでいたことからスポーツ育成の盛んな学校に通っていたジェームズだが、幼少時代はサッカー以外のスポーツも精力的に取り組んでいたという。

 次第にサッカーを中心に楽しむようになると、9歳の頃にハル・シティにその才能を買われクラブのアカデミーに入団する。当時からマンチェスター・ユナイテッドのファンで、憧れの選手は元ウェールズ代表でもユナイテッドでもレジェンドであるライアン・ギグス氏だ。

 アカデミーでは上の世代のカテゴリーでも度々プレーすることの多かったジェームズはハル・シティで成長し、世代別代表にも呼ばれるようになると、17歳になる年にスウォンジー・シティへの入団を決意する。なお代表については、イングランド生まれだが父の出身地であるウェールズを選んだ。

 一度ノると止められない彼のスピードやエネルギーをトップチームが必要とするまで時間はそうかからなかった。約3年間リザーブチームでプレーした後、1年間のローンを経験すると、ジェームズは2018年2月にトップチームデビューを果たしている。

デビューから僅か1年でクラブの人気選手に

 ジェームズのデビューは鮮烈だった。2018年2月のFAカップ4回戦ノッツ・カウンティFC戦で途中出場によりトップチーム初出場を飾ると、後半残り8分にプロ初ゴールを記録した。いきなり結果を残したのだ。

 その翌シーズン、2018/19シーズンには主力として定着すると、ウェールズの快速ウインガーはスワンズの期待に幾度となく答えた。ポゼッション主体の4-2-3-1や4-3-3の左のウインガーとして主にプレーしつつも、右サイドでの起用にも見事に適応した彼は、思い切りの良いカットインやスプリントで幾度となくチャンスを生み出し、クラブを救った。

 前述したブレントフォード戦のゴールも傑出しているが、彼はシーズンを通してチャンスメイクにおいて素晴らしいパフォーマンスを魅せた。チームが攻撃を展開する際にはサイドを駆け上がって敵を引きつけながら早いクロスを放ち、自ら切り込んでシュートを打つこともあれば、PA内でファールを受けPKを獲得することもしばしば見られた。

 昨シーズンは1試合につき、1.3回のドリブル突破と1.2回の決定的なパスを記録した上に、ファール獲得数はリーグトップのジャック・グリーリッシュに次ぐ2番目の多さだった。さらに彼の類いまれなスピードはクラブの攻撃に幅をもたらした。

 敵のSB付近でボールを受けるとジェームズは裏のスペースめがけて走り出すこともあれば、内側へカットインもできる。1度のドリブルですぐにマークを外せるため、敵からすると非常に厄介な選手だろう。スワンズのエースであるオリヴァー・マクバーニー も彼の爆発的なスプリント能力について「彼を止められる選手はチャンピオンシップにはいない」として、惜しみない賞賛を送った。

赤い悪魔との相性はどうだろうか

 プレシーズンマッチを見る限り、オレ・グンナー・スールシャール監督はジェームズに対して本職の左ウイングだけではなく、右サイドでのプレーを要求することが多い。アントニー・マルシャルや、アレクシス・サンチェスなど、左サイドでのプレーを得意とする選手が多いチーム事情の影響だけでなく、単純に右サイドの迫力不足という課題もあるからだろうか。

 ジェシー・リンガードやフアン・マタなどが基本的に右サイドでプレーするものの、突破力があるタイプではない。彼らにも右サイドを離れて中央や逆サイドで密集を作ってパスワークで崩すという強みはあるものの、ジェームズが右サイドで単独突破できるのであれば、ユナイテッドの戦いの幅が増える。

 ただジェームズのベストはもしかすると左サイドかもしれない。やはりスピードをいかしたカットインが得意である上に、左サイド寄りでのプレーを好むポール・ポグバとの距離が近づくのも良い影響を及ぼすはずだ。

 ジェームズのスピードがあれば、ポグバのスルーパス一つで相手の最終ラインを脅かせる上に、裏のスペースを警戒して相手のマークが厳しくなれば、他の選択肢も増えるに違いない。

 改善点を挙げるとすれば、そのうちの一つは決定力だろうか。昨シーズンの4得点は、プロ定着1年目であることを考慮すれば上出来だが、フィニッシュの部分で伸び代がまだまだある。

 シュートシーンだけでなく、クロスやショートパスの場面でも、ボールスピードが遅く、単純なキック力がまだ足りないのかもしれない。なによりまだ周りに遠慮しているのか、仕掛ける場面が少ない。もちろん子供の頃からの憧れのチームだ。多少緊張してしまうのも仕方がないだろうが、いち早く慣れたいところである。

 とはいえ守備の場面で強烈なスピードで相手を追いまわすため、高い位置のボールカットに関与することが多い。少なくとも守備面ではマイナスどころか、大きくプラスになる算段がついている。そういう意味では、攻撃面でのインパクトが小さかろうと、起用することに関して監督としてはリスクが小さい。またスールシャール監督は若手選手たちへの理解があるタイプでもある。すぐに見切られることはないはずだ。

 ユナイテッドのOBでもあるノルウェー人監督は今季、「若くて、ハングリー精神のある選手」を中心とした選手補強をすることで、「ユナイテッドらしさ」を取り戻そうとしている。一朝一夕で成し遂げられるプロジェクトではないかもしれないが、ジェームズが活躍してその旗頭になることができれば……。かつてはプレミアリーグを席巻した王者の復権が、大幅に早まることになるだろう。

(文:プレミアパブ編集部)

【了】

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