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マンCはなぜこんなにも強いのか? 王者たる所以、ダビド・シルバ+ラポルトの脅威

イングランド・プレミアリーグ第3節、ボーンマス対マンチェスター・シティが25日に行われた。前節のトッテナム戦でショッキングなドローに終わったアウェイチームであったが、この日は持ち前の強さを発揮し、ゲームをコントロール。見事3-1で勝利し、今季無敗を維持した。その中で輝きを放ったのはエメリック・ラポルトとダビド・シルバであった。(文:小澤祐作)

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

トッテナム戦のショックを引きずらず

ラヒーム・スターリング
第3節でボーンマスと対戦したシティはスターリングのゴールなどで3-1と快勝【写真:Getty Images】

 プレミアリーグ3連覇を目指すマンチェスター・シティにとって、受け入れ難い結果に終わったのは前節のトッテナム戦のことであった。ホーム開幕戦で同クラブは圧巻の試合運びを見せ、トッテナムに対し2度リードを奪う。しかし、昨季のチャンピオンズリーグ(CL)ファイナリストも必死に喰らい付き、2度同点に追いつく。シティはシュートこそ多く放ちながら、ゴールネットを揺らすには至らなかったのである。

 そうした不穏な空気は、運をも左右してしまうのか。後半ATにはCKからFWガブリエル・ジェズスが値千金の勝ち越し弾を奪ったかに思えたが、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)により直前にDFエメリック・ラポルトのハンドがあったとしてゴールが取り消された。結果、シティは第2節にして早くも勝ち点2を落としたのである。王者にとっては心が折れる、そんな一戦となった。

 しかし、25日に迎えたボーンマスとのプレミアリーグ第3節でシティは再び火を噴いた。トッテナム戦のショックを引きずらず、王者としての貫禄を見せつけたのである。

 ボーンマスの戦い方は明確であった。シティにボールを保持される展開を想定していた同クラブは、5-4-1のブロックを敷き、全体をコンパクトに保ちながらわずかなスペースへの侵入も許さないといったディフェンスを展開。最前線にFWカラム・ウィルソン1枚を残した状態で自陣へ引き、ボールを奪えばカウンター。この形を立ち上がりから見せていた。

 対するシティだが、立ち上がりはサイドを起点にボーンマスの攻略を図る。DFオレクサンドル・ジンチェンコはサイドラインギリギリまで広がって果敢に前線へ飛び出す。反対サイドのDFカイル・ウォーカーも同じような位置を取り、人数をかけた攻めで相手のブロックを壊そうとした。

 しかし、序盤はややミスも目立った。最後の局面でズレが生じ、なかなかゴールへの可能性を作れず。自陣でボールを奪われて、ボーンマスにあわやといったシーンもあったのだ。

最終ラインの司令塔・ラポルト

エメリック・ラポルト
最終ラインの司令塔とも呼べるエメリック・ラポルト【写真:Getty Images】

 それでもだ。シティは先制に成功する。14分、ラポルトの縦パスがMFダビド・シルバに入ると、そこから短いパスを繋ぎジンチェンコへ。ボールを受けた同選手が低いクロスを送ると、最後はFWセルヒオ・アグエロがゴールネットを揺らした。

 このシーンはラポルトの縦パスがポイントになったと言えるだろう。しかし、D・シルバにボールを入れる前まで、フランス人DFはスペースを見つけるのに苦労していた印象があった。横パスを入れる回数が多かったため、必然的にそう見えたのかもしれない。だがそれは、常に相手を揺さぶりながら着実に隙を狙っていたということがわかった。

 ラポルトがボールを持った瞬間、同選手は少し前目に球をコントロール。するとMFジェフェルソン・レルマがプレスを与えに来るのだが、そうするとD・シルバへのパスコースが空く。直前に相手を揺さぶりながら顔を上げて選手の位置などを把握できているので、コロンビア人MFが寄せに来た瞬間に背番号21がフリーとなることはわかっていた。そこに鋭い縦パス。ゴールが生まれた。

 42分にはラポルトからFWベルナルド・シウバへ正確で美しい斜めのフライパスが通る。これをキッカケにFWラヒーム・スターリングの得点が生まれた。

 ラポルトの鋭いパスが入った瞬間、ボーンマスのDF陣はややスライドが遅れ、スペースが各所に生まれていた。結果的にペナルティエリア手前中央の位置にD・シルバが飛び込んだことでゴールへの可能性がグッと近づいたことになったが、直前の斜めのパスで違いを生んだラポルトは影のアシストと言えるだろう。背番号14のフライパスが無ければ、ここまで崩し切ることは難しかったはずだ。

 まさに最終ラインの司令塔とも呼べるラポルトはこの日、144本ものパスを繰り出し、そのうちの133本を成功させている。成功率に表せば92%という高い数字だ。その中で決定的なパスを2本も記録するなど、その存在感は攻守両面で明らかとなった。彼の活躍は、この日のシティの強さを支えたと言えるだろう

シティに不可欠なD・シルバの能力

ダビド・シルバ
ボーンマス戦でシティにおける公式戦400試合出場を果たしたダビド・シルバ【写真:Getty Images】

 前半のうちに2点を奪ったシティはその後、FWハリー・ウィルソンの華麗なフリーキック弾を浴び、1点差とされた。それでも簡単に屈しないのが、王者たるものだ。

 63分、相手のスローインをカットしたところから攻撃が開始され、最後はアグエロがこの日2点目を奪い、3-1と再びリードを広げた。その後も試合のペースを握ったシティはそのまま逃げ切りに成功し、3-1で勝利。今季無敗を維持し、首位・リバプールの後を追う形となっている。

 シティはこの日、シュート数19本を記録し、支配率は74.1%。ボーンマスにはシュート数10本を放たれたが、枠内シュート数は2本に抑えるなど、攻守両面でシティは上回った。

 そして、データサイト『Who Scored』によるこの試合のMOMに選ばれたのはシティで公式戦400試合出場を果たしたダビド・シルバであった。2つのアシストを記録するなど、その活躍は申し分なかった。

 とにかくシルバはスペースを見つける能力、そこに飛び込む判断力が非常に速い。2点目の場面ではラポルトからB・シウバにボールが入ると、少し走るペースを上げ相手ボランチとCBの間のエリアへ侵入。そこでパスを呼び、スターリングのゴールをお膳立てしている。

 3点目のシーンでは、アグエロにボールが入る前に動き出しを見せており、素早くボールをタッチしてペナルティエリア内へ侵入。足を出せばファウルになるような絶妙なボール運びを見せることで相手DFを上回り、最後はアルゼンチン人FWの得点が生まれている。ゴール前での判断力とそれを行動に移す速さ。シティにとってD・シルバの能力はやはり欠かせない。

 プレミアリーグ開幕から3試合で2勝1分。やはりシティの強さは盤石だ。果たして今季はどこまで勝ち点を伸ばせるだろうか。

(文:小澤祐作)

【了】

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