インテル対ユベントスはまさにハイレベルな頂上決戦。勝負の明暗は、一体どこで分かれた?

セリエA第7節、インテル対ユベントスが現地時間6日に行われ1-2でアウェイチームが勝利を収めている。白熱した首位攻防戦となったこのゲームだが、最後はユベントスが力で押し切る結果となった。勝敗の明暗は、一体どこで分かれたのだろうか。(文:小澤祐作)

2019年10月07日(Mon)11時55分配信

text by 小澤祐作 photo Getty Images
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試合開始早々に見たユベントスの勢い

ユベントス
インテル対ユベントスのイタリアダービーは1-2で後者が勝利を収めている【写真:Getty Images】

 満員となったスタジアムで、青黒のユニフォームを身に付けた11人と白黒のユニフォームを身に付けた11人が激しくぶつかり合う。一瞬の隙をも許さない高い集中力と身を削るような強烈なタックルで相手に余裕を与えない。両者のこの一戦に懸ける意気込みは、言葉では表せないほど凄まじかった。

 現地時間6日に行われたセリエA第7節、インテル対ユベントスの頂上決戦。イタリア国内だけでなく、全世界が注目したこのゲームは、そんな人々の期待を裏切らない、美しきライバルマッチとなった。

 お互いにこの試合の数日前にチャンピオンズリーグ(CL)のグループリーグ第2節を戦っていた。インテルはアウェイでバルセロナと対戦し、FWルイス・スアレスの2ゴールを浴びて1-2で敗北。一方のユベントスはホームでレバークーゼンと対戦して3-0と完勝を収めている。そのため、この日のゲームに向け、移動による疲労の影響や試合結果によるモチベーションはユベントスの方に分があった、と見てもおかしくはなかった。

 その影響からなのか、イタリアダービーは試合開始早々に動く。4分、MFミラレム・ピャニッチのパスを受けたFWパウロ・ディバラが相手DF陣の裏に抜け出すと、そのまま左足を振り抜きゴールゲット。それまでリーグ戦わずか2失点しか喫していなかったインテルの牙城を、いきなり崩したのである。

 こうして立ち上がりから1点のリードを得たユベントスは、その後も試合のペースを握る。GKサミール・ハンダノヴィッチを含めた11人全員で丁寧にパスを繋いでくるインテルに対して、アウェイチームは果敢なプレスでしっかりと相手の持ち味を消し、ミスを誘発。攻撃時はFWクリスティアーノ・ロナウドを中心に展開し、エリア内はもちろんのこと、エリア外からも積極的にシュートを放ち、相手の最終ラインを深くまで下げさせたのである。

 9分にはC・ロナウドがカットインからインテルDF陣を次々と置き去りにすると、ほぼ中央の位置から右足を振り抜く。これはクロスバーに嫌われ得点とはならなかったものの、立ち上がりのユベントスの勢いは強烈であった。インテルはその迫力に飲み込まれ、試合開始早々から耐える時間を強いられたのである。

最も重要な選手を欠いてしまったインテル

ステファノ・センシ
インテルにとっていま最も欠かせない男、ステファノ・センシ【写真:Getty Images】

 しかし、そのC・ロナウドのシュートがあった直後から、試合のペースは徐々にインテルへと傾いていった。バルセロナ戦でも発揮された最終ラインから組み立てる縦へ素早い攻撃が、ユベントスに対してもその効果を発揮してきたのである。

 そして、その勢いのままインテルは同点に追いつく。19分、右サイドからのクロスに対応しようとしたDFマタイス・デリフトがペナルティエリア内で痛恨のハンド。インテルにPKが与えられると、これをFWラウタロ・マルティネスが冷静に沈め、試合を振り出しに戻した。

 前半のうちに同点に追いついたことで、会場のボルテージも格段に上がった。当然ながらインテルの戦士たちもその追い風を存分に生かす。相変わらずのパス回しにおける質を見せ、ユベントスに襲い掛かったのだ。

 ビルドアップの中心となるのはMFマルセロ・ブロゾビッチで、その1列前にいるMFステファノ・センシとMFニコロ・バレッラはボールを引き出すことはもちろん、それ以外にも様々な役割を果たす。たとえばセンシがボールを引き出そうと少し下がってくれば、当然ながらMFサミ・ケディラはマークに張り付いてくる。もちろんインテルはそうした時にもお構いなしにボールを当てることがあるのだが、状況判断に優れるブロゾビッチはセンシを飛ばしてL・マルティネスやMFクワドォー・アサモアに浮き球を送ることもある。

 つまりインテルのインサイドハーフの選手はユベントスのインサイドハーフをつり出す役割も徹底して行っていたということになる。インサイドハーフの後ろ、すなわちピャニッチの脇のスペースを使われることはかなり致命的とも言えたが、そうならざるを得ないほどにインテルのボール回しと状況によって使い分けるパスの種類が豊富であったということ。決して縦に素早いだけでないのだ。

 ただ、このサッカーを展開するのにはセンシのような存在は絶対的なものとなる。今季サッスオーロからやってきたインテルの“小さな頭脳”は巧みなボールタッチと両足から放たれる繊細なパスで違を生むことができるアッズーリの未来だ。これまでにもセンシはリーグ戦で決定的な仕事を果たし続けてきており、いまやネラッズーリにとってかけがえのない選手となっている。

 当然ながら、ユベントスもそれをわかっている。だからこそ、ケディラはそこを潰しに行かなければならなかった。ピャニッチの脇のスペースを空けざるを得なかったのである。サッカーはチームスポーツだが、“個”を生かした戦い方も必要となってくる。インテルはそれをピッチ内で表現したのだ。

 しかし、ホームチームにとって恐れていたことが起きる。勝負の運命はここで分かれたといっても過言ではなかった。28分、GKヴォイチェフ・シュチェスニーのパスを受けたピャニッチのコントロールがやや乱れたのを見逃さなかったセンシがプレス。しかしこの瞬間に同選手は股関節のあたりを痛め、プレー継続が不可能となってしまったのだ。

サッリが見せた勝負の策と修正力

 34分、センシの代わりにピッチへと送り出されたのはMFマティアス・ベシーノであった。もちろん同選手もボールのコントロールやパススキルが低いわけではないが、やはりセンシに比べてしまうとやや力は劣る。さらにベシーノの場合は低い位置より高い位置の方が特徴が出るのは明らか。背番号12のような役割をウルグアイ人MFに課すのは、かなり酷だったと言える。

 こうしてチーム全体のビルドアップが効果的ではなくなったインテルは、再びペースをユベントスへと引き戻されてしまった。最終ライン3枚はしっかりと繋ごうと試みるものの、アウェイチームの素早いプレスに苦戦し、中盤の核となるセンシもいないため、苦し紛れのクリアが次第に見受けられるようになり、ボールを手放してしまった。最前線のFWロメル・ルカクはデリフトを前に存在感を失う。セカンドボールもほぼユベントスに回収されている。

 後半に入ってもそうした流れは変わらず、インテルは自陣深い位置へと押し込まれる。そして、これを好機と見たマウリツィオ・サッリ監督が動き出したのは62分のこと。ケディラを下げMFロドリゴ・ベンタンクール、FWフェデリコ・ベルナルデスキに代えFWゴンサロ・イグアインを投入。ディバラをトップ下に下げ、C・ロナウドとイグアインの2トップという超攻撃的なサッカーへと転じたのである。

 しかし、これが裏目に出る。前線からの守備強度が落ちたユベントスは、それまで完璧に封じ込めていたインテルのビルドアップ再開を手助けするようになったしまったのだ。中心となるブロゾビッチのマークをディバラでは補えなくなっており、パスコースを作らせてしまっていた。当然、そこを突かれるとインテルの攻撃は加速する。点を奪おうと練り出した策が、失敗に終わったのだ。

 ただ、そこからの修正もサッリは素早く行った。71分、ディバラに代えてMFエムレ・ジャンを投入。ベンタンクールをトップ下へ上げ、より中央のエリアを堅く締めたのである。

 K・アサモアに対してはMFファン・クアドラードが1対1で負けておらず、反対のDFダニーロ・ダンブロージオに対するDFアレックス・サンドロも1対1で負けていなかった。サッリからすれば、サイドを使われることに対する恐怖はなかったのだろう。だからこそ、打つ策は一つ。多少の攻撃力を落としても中央のエリアを“消す”ことであった。

 ただ、インテルの守備も非常に堅い。なかなか崩れず、追加点を奪うことができない。このまま引き分けで終わるのか。そう思っていた矢先のことであった。

“同じ形”で生まれた決勝弾

 80分、中央で素早くパスを交換したユベントスが相手ペナルティエリア内やや手前まで侵入。ピャニッチ→C・ロナウド→ベンタンクールとスムーズに繋ぎ、最後はラストパスを受けたイグアインが冷静にシュートを流し込んでユベントスが勝ち越しに成功したのである。

 実はこのゴールシーンだが、似たようなものが前半にもあった。41分、ピャニッチからC・ロナウドへパスが入ると同選手はワンタッチでディバラへ。そしてリターンを受けた背番号7がゴールネットを揺らしたこのシーン。イグアインの決勝弾が生まれた場面とほぼ重なるものがあった。

 まず41分の場面では、ピャニッチ→C・ロナウドという流れからすべてが始まっている。そしてポルトガル人FWより前にいる選手は、基本的に相手CBとCBの間に位置している。こうすることでDFミラン・シュクリニアルとDFステファン・デフライがディバラへ寄せるため、中央のエリアがガラガラになる。そこをリターンを受けたC・ロナウドが突き、ゴールネットを揺らしたわけだ(直前のディバラがオフサイドポジションにいたため、得点にはならず)。

 では決勝ゴールの場面を振り返ってみる。まずこのシーンでも、起点となったのはピャニッチ→C・ロナウドへの縦パス1本であった。この時イグアインは、デフライとDFアレッサンドロ・バストーニの“間”に位置している。今回はC・ロナウドがボールを受けた際にベンタンクールが中央エリアに入ってきたが、始まりはほぼ同じ形。そしてデフライはC・ロナウドへ、シュクリニアルはベンタンクールにつり出され、バストーニはイグアインが少し距離を置いたのに気づかず。ラストパスを通され失点を許したわけだ。

 もしかすると、これは偶然そうなったのかもしれない。だが、少なくともピャニッチがボールを持った際にはC・ロナウドが中央へ入り、その近い距離に多数の選手が絡んでくるという攻撃の約束事は、あると考えてもいいだろう。そういった意味で言えば、ユベントスは目指していた形を最後まで継続してやり続けたということになる。それが試合終盤に実を結んだというわけだ。

 試合はこのまま1-2で終了。インテルは今季初黒星、ユベントスは無敗をキープし、首位に躍り出た。まだ序盤戦とは言え、9連覇を目指すビアンコネロにとっては大きな大きな一勝となった。

 さて、今季のセリエAは間違いなくこの2チームが牽引することとなるだろう。インテルは公式戦2連敗となったが、決して弱くはない。むしろ、ユベントスを倒すだけの力は十分にある。これまではユベントスの「1強」というイメージがあったセリエAだが、今季はそれが覆るかもしれない。そう思うほどに、今回のイタリアダービーはレベルが高かった。

(文:小澤祐作)

【了】

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