トッテナム、モウリーニョの采配によって起きた劇的な変化。大逆転の裏で明確になった課題とは?

UEFAチャンピオンズリーグ・グループリーグB組第5節のトッテナム対オリンピアコスが、現地26日に行われた。試合はトッテナムが4-2で勝利を収め、決勝トーナメント進出を決めた。2点を先行されたホームチームだったが、ジョゼ・モウリーニョ監督は前半から交代カードを切り、鮮やかに逆転した。試合のターニングポイントはどこにあったのだろうか。(文:加藤健一)

2019年11月27日(Wed)10時20分配信

text by 加藤健一 photo Getty Images
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トッテナムは2点を先行される苦しい展開

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トッテナムのジョゼ・モウリーニョ(右)と前半29分に退いたエリック・ダイアー【写真:Getty Images】

 ウエストハムとのロンドンダービーで、トッテナムのジョゼ・モウリーニョは初陣に勝利。それからわずか3日後、オリンピアコスとのUEFAチャンピオンズリーグ(CL)で、新指揮官は初めて本拠地・トッテナム・ホットスパー・スタジアムに足を踏み入れた。

 トッテナムの先発メンバーは、ウエストハム戦の11人から左サイドバックをDFダニー・ローズに代えるのみに留まった。前戦と同じくMFクリスティアン・エリクセンはベンチスタートとなり、MFデリ・アリがトップ下に入っている。

 オリンピアコスは、リーグ戦こそ首位にいるが、UEFAチャンピオンズリーグでは苦戦を強いられている。バイエルン・ミュンヘンにはダブル(連敗)を許し、レッドスター・ベオグラードにも敗北。第1節でトッテナムに引き分けたのが、唯一の勝ち点となっている。

 そのオリンピアコスが、戦前の予想に反して立ち上がりからボールを持つ展開が続く。すると6分にペナルティーアーク付近からFWユセフ・エル・アラビが左足を振り抜いてミドルシュートを決める。最下位に沈むアウェイチームが先制に成功した。

 さらに追加点はセットプレーから生まれる。19分、左CKからインスイングで放り込まれると、ニアでMFダニエウ・ポデンセが逸らしたボールはゴール前に転がる。これをDFルベン・セメドがゴールへ流し込んでスコアを0-2とした。

流れを変えたモウリーニョの決断

 予想外の0-2というスコアに、モウリーニョは前半から動いた。中盤で不用意なパスミスが目立っていたMFエリック・ダイアーを下げて、29分にエリクセンを投入。そのままダイアーが務めていた4-2-3-1の「2」に入った。

 攻めるしかないトッテナムは、DFセルジュ・オーリエが上げたクロスに相手DFが空振り。これをアリが難なく決めて、アディショナルタイムに1点を返して前半を終えた。

 0-2となるまでは、どちらがホームで、どちらがグループステージ4位で、どちらがCLファイナリストのチーム分からなかった。それでもファイナリストはエリクセン投入によって徐々に攻撃の形と思しきものが見え始めた。

 前半の選手交代とドレッシングルームでの時間を経て、トッテナムは自信と勇気を取り戻したように見えた。後半開始から立て続けに攻め込むと、50分にFWルーカス・モウラが右サイドからグラウンダーでマイナス方向に折り返す。中で待っていたFWハリー・ケインが決め、劣勢で始まったゲームを振り出しに戻した。

 モウリーニョは61分に、早くも2枚目の交代カードを切る。右サイドのルーカスを下げて、同じポジションにMFムサ・シソコを投入。オーリエ、エリクセンとのトライアングルが高い位置で起点となり、敵陣へと押し込んでいった。

 73分にトッテナムが逆転に成功。アリのこぼれ球回収から22本のパスをつないで最後はオーリエが決めた。さらにトドメの一撃はエースのケイン。77分にエリクセンが左サイドからFKをゴール前に入れると、ゴール前でケインが頭で逸らしてゴールに流し込んだ。

モウリーニョがもたらした変化と見えてきた課題

 トッテナムのシステムはウエストハム戦と同じ4-2-3-1。右サイドバックのオーリエを高い位置に上げる一方で、左サイドバックはDFラインに残す非対称の形で攻撃を開始させている。

 中盤の底でプレーしたダイアーが29分弱で記録したパス本数はわずかに10本。前線の4人へのパスは2本のみに留まり、攻撃は停滞した。ほとんど敵陣でボールを保持していた中で3点目、4点目を奪ったことからも、前半と後半の違いは明らかだった。

 試合後にモウリーニョは「解決策を見つけるため(の交代)だった」とダイアーをかばっている。しかし、指揮官の迅速な決断がその後の逆転につながったことは間違いない。

 ただ、戦術的に大きな変化があったようには見えなかった。戦術やポジションの指示ではなく、自信や落ち着きといった部分をハーフタイムに指揮官は伝えたという。メンタルを取り戻したことが後半の逆転につながったと言える。モウリーニョは選手交代でボールを落ち着かせ、ハーフタイムには自信と勇気を取り戻した。

 時期尚早かもしれないが、2戦で見えてきた課題もある。ウエストハム戦の後半アディショナルタイム、そしてこの試合の2失点目はCKから生まれたもの。就任からまだ日が浅いので着手できていないかもしれないが、2戦連続で失点を喫しているセットプレーの守備は、今後の改善が急がれるだろう。

 5年以上に渡って築き上げてきた前任者のサッカーが暗礁に乗り上げたところに、スペシャル・ワンがやってきた。トッテナムは4日後のプレミアリーグ・ボーンマス戦を経て、12月4日にはオールド・トラフォードで古巣との対戦が控えている。

 前指揮官の下で戦った9月のアウェイゲームでは、30分までに2点を先行しながら、同点に追いつかれて勝利を逃している。この日はお返しと言わんばかりに、2点を先行されながら4点を奪って逆転勝利を収め、決勝トーナメント進出を決めた。オーリエの逆転弾によって勝利をもたらしたスタジアムには、『聖者の行進』の歌声が響き渡っていた。

(文:加藤健一)

【了】

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