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トッテナムの戦術、選手起用は? モウリーニョの腕により蘇る。新指揮官がチームにもたらしたものとは?【序盤戦レポート(9)】

2019/20シーズンは序盤戦を終えた。補強が成功して首位争いを演じるチームもあれば、低迷して監督交代を余儀なくされたチームもある。各クラブのこれまでの戦いを振り返りつつ、見えてきた戦い方と課題を考察していく。第9回はトッテナム。(文:編集部)

シリーズ:序盤戦レポート text by 編集部 photo by Getty Images

トッテナムの戦術は

トッテナム
トッテナム【写真:Getty Images】

 昨季のチャンピオンズリーグ準優勝チームは今シーズン、難しい戦いを強いられていた。在任6年目を迎えたマウリシオ・ポッチェティーノ監督の元でチームは低迷。一時はリーグ戦で14位まで落ちた。そのためクラブは同監督を解任し、新たにジョゼ・モウリーニョを招いた。

 そしてトッテナムの戦術は監督交代前後で変化が見られる。

 まず前任者の元では、前線からプレスをかけショートカウンターへ移行するスタイルは健在であった。ビルドアップでは中盤からしっかりと繋いでいくスタイルで、後方からのロングパスを多用するような戦術ではない。そして両SBが高いポジションを取ることにより、サイドハーフの選手は中へポジションを移す場面が多かった。

 新体制後の変化はオフェンス時のシステム変更だろう。基本のシステムは4-2-3-1だが、オフェンス時には3-2-4-1の形にシステムを変える。右SBのDFセルジュ・オーリエが一枚高い位置を取り、中盤の枚数を増やす。それによって今夏抜けたDFキーラン・トリッピアーの穴を埋めるような攻撃をすることが出来るようになった。そしてFWソン・フンミンとMFデリ・アリらのポジションは流動的になり自由に動く場面が多い。

 また後方からのロングパスも増加した。その鍵を握る男がDFトビー・アルデルワイレルドだ。同選手は精度の高いロングパスを蹴ることが出来る。この男からソンやアリが抜け出す場面がよく見られる。もちろん中盤から丁寧に繋いでいく形も引き継いでいる。

不安定なディフェンスライン

 GKは8年目を迎えたユーゴ・ロリスがゴールマウスを守るが、プレミアリーグ第8節のブライトン戦で左肘を脱臼してしまい戦列を離れている。代わって出場しているのが2番手GKパウロ・ガッサニガだ。守護神の代役として申し分ない活躍を見せている。

 監督が代わって以降のDFラインは少し変更が見られる。ポッチェティーノ前監督は左からDFダニー・ローズ、ヤン・フェルトンゲン、アルデルワイレルド、セルジュ・オーリエをファーストチョイスとしていたが、モウリーニョ体制後は左SBにフェルトンゲンが入り、CBにDFダビンソン・サンチェスが起用される。

 右SBは、今季開幕3試合はオーリエに代わってDFカイル・ウォーカー=ピータースが先発を務めたが、その後はベンチ外が続きファーストチョイスはオーリエになっている。

 左SBはモウリーニョが就任して以降フェルトンゲンが起用されるが、これはオフェンス面を考えての起用だ。先に記したように基本システムは4-2-3-1だが、攻撃時は3-2-4-1のフォーメーションになる。その時の最終ラインはフェルトンゲン、アルデルワイレルド、サンチェスで形成される。ここに新監督の「色」が伺える。また控えはDFダニー・ローズとベン・デイビスがいるため左SBの層は厚い。

 経験豊富な選手を揃える最終ラインだが、今季は安定性に欠いている。前線からハイプレスをかけられると、バタバタしてしまい脆さを露呈してしまう。これは監督が代わっても見られることで、トッテナムが抱える問題だ。

序列が下がる者と上がる者

 中盤の底はMFムサ・シソコとMFタンギ・ヌドンベレが中心となっている。両者とも推進力に優れた選手でトッテナムのビルドアップで重要な役割を担っていると言っていいだろう。

 これまでチームの司令塔として支えてきたMFクリスティアン・エリクセンは難しい立場に置かれている。今季開幕前に放出対象となったことで調子が上がらず、本来の実力を発揮出来ていない。しかしこの選手の能力を疑うことは出来ない。精度の高いキックを武器に創造性に富んだパスと強烈なシュートを放つことに長け、守備の面でもハードワーク出来る。前半戦で躓いてしまった原因の一つにこの人の不調が挙げられるだろう。

 また監督が代わったことで序列が上がった選手もいる。それがMFデリ・アリだ。怪我の影響もあり出遅れてしまったこともあるが、前任者の元でアリはベンチを温める試合も多かった。しかし新監督はアリを中心選手の1人として考えており先発で起用している。同選手は攻撃センスに優れており、パス、ドリブル、シュートに長けた選手だ。トッテナムの攻撃陣を牽引する選手の1人と言って良い。

 そしてFWソン・フンミンの存在も大きい。左サイドを主軸にCFをこなすことも出来る。緩急を付けたドリブルとトップスピードでも細かいタッチが出来るのが持ち味。チームの得点源の1人だ。

絶対的エースが君臨も…

 やはりトッテナムのCFはハリー・ケインが絶対的な存在だ。昨シーズンは怪我で17ゴールに終わったが、14/15シーズンから4季連続で20ゴール以上を決めるなど申し分ない成績を残している。2トップ時はFWソン・フンミンとコンビを組むことが多いが、控えのFWルーカス・モウラと組むこともある。

 ケインはゴールを奪うだけでなく、前線からアグレッシブにプレスをかけることが出来る選手だ。ハイプレスをかけるトッテナムの守備戦術でこの男の存在は非常に重要と言っていい。この役割は監督が変更しても変わらない。

 しかし前線の層が厚いとは言えない。昨季はFWフェルナンド・ジョレンテがバックアップとして存在したが、今季は控えにCFを本職とする選手がいない。そのため万が一の場合にはソンやルーカスがその穴を埋めることになる。CFを本職とする選手を1人は置いておきたいところだ。

 今シーズンのトッテナムはなかなか安定をした戦いをすることが出来なかった。しかしモウリーニョ体制になって日は浅いが、徐々に勝ち点を積み上げてきている。そしてスペシャルワンは「勝者のメンタリティー」というものを、チームに植え付けようとしている。新生トッテナムがどこまで順位を上げてくるだろうか。後半戦に注目だ。

(文:編集部)

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