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セリエA 4年前

イブラヒモビッチ対C・ロナウド。その軍配は? やはり別格の存在感、その一方で…【コッパ・イタリア】

コッパ・イタリア準決勝1stレグ、ミラン対ユベントスが現地時間13日に行われ、1-1のドローに終わっている。注目を集めたのは、やはりズラタン・イブラヒモビッチとクリスティアーノ・ロナウドの両エースだ。彼らのパフォーマンスはどうだったのか。(文:小澤祐作)

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

名門同士の対決は1-1ドロー

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【写真:Getty Images】

 FWズラタン・イブラヒモビッチとFWクリスティアーノ・ロナウド。サッカー界を代表する2人のスターの名を聞いて、皆さんは何を頭に思い浮かべるだろうか。

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 恐らく多くの人は、2013年に行われたブラジルワールドカップ・欧州予選プレーオフ、2ndレグのスウェーデン代表対ポルトガル代表の試合を思い出したのではないか。この試合は2-3で終了し、2戦合計スコア4-2でポルトガル代表がワールドカップ本大会行きを決めたのだが、この合計6得点を叩き出したのがイブラヒモビッチとC・ロナウドの2人だった。世界屈指のストライカーによる打ち合いは、もはや伝説になったと言ってもいいだろう。

 そんな両者が、イタリアの地で再び顔を合わせることになった。コッパ・イタリア準決勝1stレグ、ミラン対ユベントス。『フットボール・イタリア』によると、日本時間13日の時点で7万席のチケットが売れていたとのこと。コッパ・イタリア準決勝史上最多の入場者数を記録することになるなど、注目度の高さは明らかだった。

 そんな名門同士の一戦は、立ち上がりからミランが攻める展開に。高い位置でボールを奪いきり、手数をかけないシンプルな攻撃で相手を押し込んだ。2-4で落としたミラノダービーのショックを引きずらない、素晴らしい入りを見せていたと言えるだろう。

 一方でユベントスは集中した守りを見せるミランに対し攻撃陣が停滞。中央の狭いエリアでボールを受けても捕まり、サイドにパスを流してもそこからの展開で苦戦を強いられ、なかなかフィニッシュまで持ち込むことができなかった。1-2で落とした8日のエラス・ヴェローナ戦同様、組織的な守備を展開してくる相手への苦手意識が強く、歯車が噛み合わないまま、時間だけが過ぎていった。

 そんな状況が続く中、試合が動いたのは61分。FWサム・カスティジェホのフワッとしたクロスを、ペナルティエリア内でFWアンテ・レビッチが右足で押し込みミランが先制に成功。前半の勢いを消さずにリードを奪った。

 その後、ミランは71分にDFテオ・エルナンデスがこの日2枚目のイエローカードを提示され、退場を余儀なくされるなど数的不利な状況に追い込まれる。が、途中出場の選手もピッチに立った瞬間からアグレッシブな姿勢を見せるなど、粘り強さは失っていなかった。

 しかし、悲劇は起きた。AT、DFダビデ・カラブリアがペナルティエリア内で痛恨のハンド。PKをユベントスに与えると、最後はC・ロナウドが冷静に沈め、アウェイチームが土壇場で同点に追いついた。試合はそのまま1-1で終了している。

イブラヒモビッチの出来は?

 さて、試合内容を簡単に振り返ったところで、ここからはこの日注目を浴びたイブラヒモビッチとC・ロナウド両者のパフォーマンスを振り返っていきたい。まずは、イブラヒモビッチだ。

 結論から言うと、この日も背番号21の存在は大きかった。DFマタイス・デ・リフト、DFレオナルド・ボヌッチという世界最高峰のCBを揃えるユベントス相手にも、まったく持ち味が消えることはなかったと言えるだろう。

 毎度お馴染みのことながら、この日もイブラヒモビッチの足下にはとにかくボールが収まった。そうすると必然的に、レビッチやMFハカン・チャルハノールは前を向いた状態で次のプレーに移行することができる。チーム全体の攻撃がイブラヒモビッチ加入後に加速したのは明らかで、この日もその効果というものは存分に表れていたと言えるだろう。

 また、この日はボックス内でのポジショニングに一つの狙いが見えた。それが、DFアレックス・サンドロ、DFマッティア・デ・シーリョの両サイドバックの近くにいることで、身長差を生かしたミスマッチを作り出すということだ。こうすることで空中戦では絶対的な強さを引き出すことができ、それがシュートに繋がらずとも頭で落としたボールがチャンスに結びつく可能性も高まる。

 こうするとユベントス守備陣の意識はより一層イブラヒモビッチへ傾く。ボヌッチ、デ・リフトの両CBもミスマッチを引き起こさないため、サイドバックのカバーに集中し、重心を背番号21のいる方向へと強める。先にボールに触れようと無理に飛び出すことはできず、深い位置で構えた。しかし、その影響で2列目から飛び出してくるミランの攻撃陣を捕まえられなかった。ペナルティアーク付近のエリアを何回か突かれたのは、そうした理由も大きいのではないか。

 そして、なんと言っても先制点の場面だ。カスティジェホのクロスに対し、イブラヒモビッチが壁となったことでデ・リフトが無力化。ファーサイドのレビッチへボールが届き、ゴールネットが揺れている。自らゴールを奪えずとも、そこにいるだけで相手に様々な混乱を引き起こさせる男。それがイブラヒモビッチである、ということが改めて証明された試合になった。

 データサイト『Who Scored』によると、この日のイブラヒモビッチはシュート数4本を記録。決定的なパスの本数は両チーム合わせてトップとなる6回繰り出しており、空中戦勝利数も両チーム合わせてトップの4回を叩き出した。得点こそ奪えなかったが、前線での仕事ぶりはチームにとって頼もしかったと言うべきだろう。

 ただ、2ndレグはイエローカードの累積により出場停止。ミランはその他にもカスティジェホとT・エルナンデスを同じく2ndレグで欠くことが確定している。決勝進出へ向け、ダメージは特大だと言える。

C・ロナウドの出来は?

 一方でユベントスの大エースであるC・ロナウドだが、いつもと比べるとインパクトはなかった。ただ、それは個人の問題というよりもチーム全体の問題の方が大きいだろう。

 ビルドアップの起点となるアンカーのMFミラレム・ピャニッチだが、ミランのチャルハノールにマンマークを付けられた影響でほとんど仕事を与えてもらえなかった。そうなるとユベントスの攻撃自体がエンジンをかけられず、ミランに脅威を与えることができない。ヴェローナ戦同様、苦し紛れのパス回しが多かった印象だ。

 1トップに入ったFWパウロ・ディバラも何度か中盤のエリアに下りてパスを引き出したが、マークの受け渡しをスムーズに行ったミラン守備陣にことごとく捕まり、攻撃のスピードは結局上がらず。自陣でボールをロストする回数も決して少なくなく、ミランにショートカウンターを浴びては全体のラインを深い位置まで下げられていた。

 そうなると守備にはあまり加担しないC・ロナウドがボールに触れる機会も当然ながら減る。パスを受けてもサイドに目一杯開いてのものがほとんどで、ゴールへの距離が遠く決定的な仕事が果たせない。さすがに全盛期ほどのスピードはなく、個人でいくつもの局面を打開するのは無理がある。リーグ戦では絶好調を維持しているC・ロナウドだが、この日はチーム全体としても個人としてもうまくいかない時間帯が続いていたのだ。

 結局、C・ロナウドは前半シュート0本に終わっている。最も得点が期待できる男がノーフィニッシュで、ディバラも下がり目の位置でプレー、MFファン・クアドラードもフィニッシャーではない。この3トップでは攻撃が活性化しないのは当たり前だ。先述した通り、個人の問題というよりは、チーム全体の問題。マウリツィオ・サッリ監督が求めている形が見いだせないのは不安な要素だ。

 ただ、C・ロナウドは89分間ダメでも残りの1分で仕事を果たせる男。この日も後半ATにカラブリアのハンドを誘発し、自らPKを決めた。まさにエースストライカーだ。

 この日のC・ロナウドは、チーム内ワースト2位となる55回のタッチに終わっている。最後の最後に仕事は果たしたが、シュート数は4本で、枠内に飛んだのはPKの1本のみ。苦戦を強いられたと言えるだろう。2ndレグではどんな活躍を見せるか注目だ。

(文:小澤祐作)

【了】

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