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バルセロナは大丈夫? 好調ヘタフェに勝利も募る不安、限界を迎える日も近い理由とは?

リーガ・エスパニョーラ第24節、バルセロナ対ヘタフェが現地時間15日に行われ、2-1でホームチームが勝利している。バルセロナはこれでリーグ3連勝。首位のレアル・マドリーにプレッシャーを与えることになった。しかし、内容は…(文:小澤祐作)

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

立ち上がりはヘタフェ優勢

バルセロナ
【写真:Getty Images】

 8万9409人もの観客が訪れたカンプ・ノウに、バルセロナはヘタフェを迎え入れた。第23節終了時点で3位につけるアウェイチームは、リーグ戦直近4試合で全勝。失点数は同4試合で「0」と、攻守両面で抜群の強度を誇っている。

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 さらに、ヘタフェを率いるのはホセ・ボルダラス監督。バルセロナを指揮するキケ・セティエン監督はこのボルダラス監督の目指すスタイルを嫌っており、これまでにも何度か苦戦を強いられてきた。ホームでの一戦とはいえ、バルセロナにとってこのヘタフェ戦が簡単なものにならないことは、容易に想像できた。

 その予想通り、バルセロナは立ち上がりからヘタフェに苦戦を強いられた。GKマルク=アンドレ・テア・シュテーゲンを含めた11人全員でのボール保持を基本とするバルセロナに対し、ヘタフェはマンマークで対応。高い位置からプレッシャーを与え、ホームチームの組み立てを的確に潰したのである。

 困ったバルセロナは、バックパスを行った瞬間に前線の3枚が果敢に相手の背後を突く動きを見せボールを引き出すなど、ロングパスを用いて一気にゴールへ、という工夫も見せた。しかし、守備時に6-3-1のブロックを築くヘタフェの壁はそう簡単に崩せず。なかなかGKダビド・ソリアを脅かせないまま、時間だけが過ぎていった。

 そのバルセロナを22分にアクシデントが襲う。左サイドバックのDFジョルディ・アルバがスプリントした際に股関節のあたりを痛め、プレー続行が不可能に。DFジュニオール・フィルポとの交代を余儀なくされたのだ。3トップにプラスして攻撃を活性化させられるレフティーの負傷退場は、今後チャンピオンズリーグ(CL)などを戦うバルセロナにとって大きな痛手となるはずだ。

 重要な選手を欠いたバルセロナは、25分にこの日が古巣との対戦となったMFマルク・ククレジャに決定機を作られるなど、ヘタフェのボール奪取→速攻に悪戦苦闘。不用意なミスパスも見受けられるなど、リズムを掴めない時間帯が続いたのである。

2点を先取。収穫の多い45分間に

 しかし、34分に流れは変わる。DFサミュエル・ウンティティの横パスをペナルティエリア手前で受けたFWリオネル・メッシがダイレクトでFWアントワーヌ・グリーズマンにパスを出すと、最後はボールを少し浮かしてゴールへ。それまでほとんど決定機のなかったバルセロナが、待望のリードを奪ったのである。

 ウンティティからのパスが入った際、すでにグリーズマンは動き始めていた。しかしそれは縦方向ではなく、横だ。これによりオフサイドラインにかかりにくくなり、かつゴールに迫ることができた。また、メッシのダイレクトパスも秀逸で、ワンタッチ、それも斜め前方向にボールを流すように出しているため、相手からすると読みづらく捕まえにくい。ヘタフェもゴール前に人数を集めることができていたが、彼らの技術力がそれを上回ったと言えるだろう。

 勢いを持って挑んできたヘタフェのエンジンを切るかのような先制弾。そのわずか5分後にも、バルセロナは点を奪う。

 39分、右サイドから攻撃を展開すると、細かなパスを繋ぎ左サイドのフィルポへ。相手陣内深い位置まで侵入した同選手はグラウンダーのクロスを上げると、最後はペナルティエリア内でフリーとなっていたDFセルジ・ロベルトが左足でゴール。リードを広げた。

 ブロックを築くヘタフェに対し、横パスを多く用いることで左右への揺さぶりを効かせた。最後はククレジャのプレスバックが遅れたことによりS・ロベルトがフリーとなっていたが、それも反対サイドへのボール展開により、守備時の意識を薄れさせたと言えるだろう。パスを多く取り入れての追加点は、まさにセティエン監督の目指す形と言っていいのではないか。

 前半はバルセロナが支配率77%を記録し、シュート数は6本、被シュート数は2本とヘタフェを大きく上回った。とくに30分過ぎから流れを掴めはじめ、そこで2点リードを奪えたことは大きかった。途中交代のフィルポもうまく試合に入るなど、どちらかと言うと収穫の多い45分間になったと言えるだろう。

バルセロナに募る不安

 迎えた後半、立ち上がりはお互いにあまり大きな動きはなかった。ボールを保持するバルセロナ、カウンターを狙うヘタフェという構図にもちろん変化はなく、これといったチャンスシーンもないまま時計の針も65分を回った。

 すると66分、右サイドを駆け上がったFWハイメ・マタがクロスを送ると、最後はFWアンヘル・ロドリゲスがボレーシュート。テア・シュテーゲンは一歩も動けず、ボールはゴールネットに突き刺さった。

 これで息を吹き返したのはヘタフェ。同点に追いつこうと、さらにギアを上げマンマーク&ハイプレスでバルセロナに襲い掛かってきた。その強度にホームチームは再び飲み込まれ、なかなか相手ゴール前までボールを運べない。MFセルヒオ・ブスケッツやMFフレンキー・デ・ヨングらへのプレススピードも上がり、バルセロナはボールの配給所を失ったのである。

 71分にはセットプレーから大ピンチを招く。テア・シュテーゲンの神セーブがなければ失点といったシーンだった。その2分後にはグリーズマンがゴール前での絶好のチャンスを逸するなど、バルセロナはなかなかリズムを掴めず。ただただヘタフェの猛攻に耐えるしかなかった。

 そして、なんとか守備陣が奮闘し、試合は2-1で終了。バルセロナがリーグ3連勝とし、首位であるレアル・マドリーにプレッシャーを与えることになった。

 しかし、好調・ヘタフェに勝利はしたものの、不安の募る内容だったことは間違いない。とくに後半は1点を返されたことで相手の勢いが増し、バルセロナは冷静さを失いヘタフェのペースに合わせに行ってしまった。それにより自分たちのリズムを消し、苦戦を強いられた。

 攻撃の起点は相変わらず中盤の位置まで下りてきたメッシがほとんどで、ここは今後も大きな変化はなさそう。また、確かにこの日のヘタフェの強度はすさまじく、どのチームでも苦戦を強いられることになりそうだが、中盤と最終ラインで危険なロストが多かった点も気になるところ。ハイプレスに対しワンタッチパスが極端に少なく、単調なリズムになって中盤のエリアで捕まえられるシーンも少なくはなかった。

 ただ、今後もそうした戦い方を用いてくるチームは現れるはず。セティエン監督の考え方にはマッチしないのは明らかだが、やはりボールを捨てた戦い方も今後は強化していく必要があるだろう。ポゼッションだけでは、限界を迎える日も近い。

(文:小澤祐作)

【了】

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