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レアル・マドリー、終了間際の悲劇。後味悪いドローと浮き彫りになったアザールとベイルの明暗

リーガ・エスパニョーラ第24節、レアル・マドリー対セルタが現地時間16日に行われ、2-2のドロー決着となった。この日はエデン・アザールが戦列に復帰。久々の試合ながら高パフォーマンスを披露し、得点を生むキッカケにもなった。一方で不安なのがガレス・ベイル。両者の明暗がハッキリ分かれる試合となった。(文:小澤祐作)

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

アザールが先発復帰

レアル・マドリー
【写真:Getty Images】

 リーガ・エスパニョーラ第23節を終えた時点で首位に立つレアル・マドリーと、同17位につけるなど苦戦を強いられているセルタの激突。前者が圧倒的な力の差を見せつけると思われたこの試合は、少し意外な形での幕切れとなった。

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 マドリーはこの試合でも4-3-3システムを採用。FWカリム・ベンゼマやMFカゼミーロなどが順当に名を連ねる中、約3ヶ月間の負傷離脱を余儀なくされていたFWエデン・アザールがスタメン入り。ようやく戦列復帰を果たした。

 立ち上がりからボールを支配したのはホームのマドリー。ピッチを幅広く使い、テンポの良いパスで何度か相手陣内深い位置まで侵入することができていた。しかし、守備時は4-5-1のような形でブロックを築くセルタを前に、フィニッシュの部分で精度を欠いたマドリー。GKルーベン・ブランコを襲うことはできなかった。

 すると7分、マドリーは一瞬の隙を突かれる。中央でボールを受けたFWイアゴ・アスパスが前を向くと、FWヒョードル・スモロフがマドリーのCBとSBの間を突く。そこに絶妙なスルーパスが通ると、最後はスモロフがGKティボー・クルトワとの1対1を冷静に制し、アウェイのセルタが先制点を奪った。

 まさかの失点を喫したマドリーは、その後もボールを握りセルタを押し込む。攻めることができていた分、慌てていた様子はなかったが、やはり最後の部分で噛み合わず、押し返されてはまた攻める、といった展開を繰り返した。セカンドボールはMFフェデリコ・バルベルデやカゼミーロが運動量豊富にピッチを動き何度か回収したが、切り替えの早いセルタを前に速攻も通用しなかった。

 マドリーは次第にサイド攻撃が増え、そこからシンプルなクロスを上げてチャンスをうかがった。しかし、それではセルタの守備陣は大きく崩れない。ゴール前での決定的なミスも少なく、マドリーにとって苦しい時間帯は続いた。

 結局、マドリーは前半を0-1のまま終えた。支配率は70%でシュート数は7本。セルタを押し込んでいたのは確かだった。しかし、枠内シュート数は0本。やはりゴール前でのフィニッシュの質を欠いていた。

終了間際に悲劇

 迎えた後半、マドリーは前半と変わらずボールを支配し、ピッチを幅広く使いながらセルタの守備陣に穴をあけようと試みた。そして52分、ついにアウェイチームの牙城が崩れた。

 ベンゼマからのスルーパスに抜け出したDFマルセロがグラウンダーのクロス。最後はMFトニ・クロースがコースを的確に狙ったシュートを突き刺し、マドリーがついに同点に追いついた。

 これで勢いに乗ったマドリーは64分、アザールがペナルティエリア内でGKブランコに倒されPKを獲得。これをキャプテンのDFセルヒオ・ラモスが冷静に沈め、逆転に成功した。

 一方で逆転されたセルタは、今度は追いつこうと攻撃的な4-3-3システムに変更。FWピオーネ・シスト、MFデニス・スアレス、FWサンティ・ミナと攻撃的な選手を次々と投入し、反撃を開始。サンティアゴ・ベルナベウでなんとか勝ち点を奪おうとしたのだ。

 ただ、マドリーも冷静に対応。効果的なプレスとボール奪取後の的確なパス回しでセルタにリズムを与えず、1点リードを保つ。ジネディーヌ・ジダン監督もMFルカ・モドリッチやDFフェルラン・メンディを投入し、試合を締めにかかった。この時点で、マドリーが逃げ切りに成功するだろうとも思った。

 しかし、85分に悲劇は起きた。中央でD・スアレスがボールを持つと、ゴール前に鋭いスルーパスを送る。これに反応したのはS・ミナ。最後は冷静にゴールへ流し込み、土壇場でセルタが同点に追いついた。

 D・スアレスがボールを持った際、S・ラモスの寄せが甘かった。ボールホルダーの身体の向きが横だったため、それほど行かなくても縦には来れないと思ったのだろう。しかし、ボールは出た。そして前半の失点シーン同様、突かれたのはDFラファエル・ヴァランとDFダニエル・カルバハルの間。S・ミナの斜めに抜けることでオフサイドにかからない動き出しも見事だったが、最後までここを閉めることができなかったのは痛い。

 試合はこのまま2-2で終了。マドリーはリーグ戦の連勝が「6」でストップ。前日に勝利を収めていたバルセロナとは勝ち点差が1となった。

アザールとベイルの明暗

レアル・マドリー
【写真:Getty Images】

 データサイト『sofa score』によると、マドリーはこの日支配率65%、シュート数15本、被シュート数5本に抑えるなど、数字上でセルタを圧倒していた。確かに、内容自体はそこまで悪くはなかった。しかし、だからこそ失った勝ち点2は大きな痛手だ。複数失点を喫した守備陣はもちろん、仕留めきれなかった攻撃陣にも不安が残る、後味の悪いドローとなってしまった。

 一方で個人に目を向けると、やはりFWガレス・ベイルの調子が上がらないのは気になるところだ。もともとマドリーでプレーすることにどれだけのモチベーションを持っているのか定かではないが、あまりにも存在感が薄れすぎている。守備時の対応も的確とは言えず、右ウィングはマドリー最大のウィークポイントと言っていいかもしれない。

 試合後のスタッツを見てみても、マドリーはこの日、ベイルがいる右サイドからの攻めが全体の31%を占めていたが、同サイドからシュートに結びついたのはわずか13%というデータが出ている。ベイル個人の問題ではない部分はもちろんあるが、確かに試合を改めて振り返っても、ほとんどがアザールのいる左サイドで攻撃が行われており、この日の2得点も同サイドから生まれたものだった。

 ベイルはこの日、シュート数わずか2本に終わっており、パス成功率はスタメンの中(クルトワを除く)で最も低い71%を記録。ドリブル成功数4回はチームトップを記録したものの、レーティングは攻撃陣の中で最低となる「6.6」だった。右サイドの、それもウィングの位置にいる選手がこのような結果では、相手からしても当然脅威にはならない。今に始まったことではないが、やはり厳しいと言わざるを得ないだろう。

 一方でこの日に戦列復帰を果たしたアザールは、久々の出場ながら良いパフォーマンスだったと言えるだろう。引いた相手に対してのボディバランスを駆使した“剥がすドリブル”は非常に効果的で、何度かワンタッチで敵を外すこともあった。復帰戦でこれだけのパフォーマンスができるならば、今後もやはり重要な戦力として頼もしい存在になっていくだろう。

 ただ、この日はシュート数0本に終わったのも事実。そもそもチームにフィットしかけた段階での負傷離脱を余儀なくされたため、まだチームメイトとの連係も抜群ではない部分はある。今後はそういった点も伸ばしつつ、好調を維持してもらいたいところ。ジダン監督もそれを望んでいるはずだ。

(文:小澤祐作)

【了】

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