中島翔哉が流れを変えた、ポルトの劇的勝利に至るまで。権田修一は大奮闘も一歩及ばず…

ポルトガルリーグの日本人対決は激闘となった。現地23日に行われた同国1部リーグ第22節で、ポルトの中島翔哉とポルティモネンセの権田修一が同じピッチに立った。しかし、最後に待っていた結末は対照的なものに。劇的な幕切れに至るまでの攻防を振り返る。(文:舩木渉)

2020年02月24日(Mon)9時28分配信

text by 舩木渉 photo Getty Images, Portimonense SC
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苦しみ続けた末の勝ち点3

中島翔哉
【写真:Getty Images】

 強面な指揮官も劇的なゴールに喜びを爆発させ、思わず笑顔が弾けた。その歓喜の瞬間にまで至る道のりが険しかったことは、誰の目にも明らかだった。

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 現地23日に行われたポルトガル1部リーグ第22節で、ポルトはホームにポルティモネンセを迎えた。ポルトにとって勝てば暫定ながら首位に立てる重要な一戦。ドイツまで赴いてレバークーゼンに1-2で敗れたヨーロッパリーグ(EL)から中2日という厳しいスケジュールの影響も少なからずあっただろう。

 序盤からポルトは苦しみ続けた。最終的に1-0でポルティモネンセを下したが、最終盤までスコアレスのままもつれ、途中にドラマチックな展開も含まれていた。

 パウロ・セルジオ監督が率いて2試合目のポルティモネンセは、指揮官自ら「勝ち点3を獲得するゲーム」と位置付けてポルトの本拠地エスタディオ・ド・ドラゴンに乗り込んだ。「ドラゴンで勝ち点を獲得するためには、非常に強固なチームであり、攻守にわたって卓越したものを追求する必要があることはわかっている」という言葉通り、新任監督は極めて現実的でソリッドなプランをチームに落とし込んできた。

 前節モレイレンセ戦では4バックだったが、対ポルト用に5バックを採用。さらにDF安西幸輝をスタメンから外し、より守備に強みを持つガーナ人DFエマニュエル・ハックマンを右サイドバックに据えた。コンパクトな5-4-1でゴール前のスペースを消しつつ、前線にカウンターの矢を放つ戦い方はポルトを苦しめた。

 攻撃的な4-4-2で臨んだポルトは、レバークーゼン戦からスタメン10人を踏襲していた。唯一変更があった右サイドは崩しにおける武器であり、ポルティモネンセ戦ではカウンターで狙われる急所にもなった。

 右サイドMFのオターヴィオは1ヶ所にとどまることなく、ピッチ上を幅広く動き回って味方からのパスを引き出し、時には逆サイドにまで顔を出した。前方が空くことで右サイドバックのヘスス・コロナが極めて高い位置を取り、攻撃に厚みを加える。

 ポルティモネンセは相手からボールを奪うと、コロナの背後にできる広大なスペースにMFブルーノ・タバタを走らせてカウンターを繰り出す。3試合連続となったGK権田修一も積極的にポルトの右サイドの裏を狙ったロングパスを蹴った。

中島がポルトにエナジーをもたらす

 38分には狙い通りの形から決定機も作った。ポルトの右サイドを破ったDFエンヒッキが精密なクロスを上げると、中央で相手DFのマークを巧みに外したFWジャクソン・マルティネスがフリーでヘディングシュートを放つ。惜しくもゴールの左に逸れたが、ポルトに危機感を与えるには十分だった。

 試合の最も大きな分岐点となったのは、前半終了間際のPKだった。40分、ペナルティエリア内でポルトのMFマテウス・ウリベに、シュートモーションに入ったジャクソン・マルティネスが倒される。一度は流されたが、主審はVARの助言を受けてオン・フィールド・レビューで映像を確認してファウルの判定を下した。

 ポルトが波に乗れない状況で先制の絶好機。しかし、ジャクソン・マルティネスが蹴ったPKはゴールの上に大きく外れていった。

 後半に入っても微妙なボタンの掛け違いで停滞感を拭えなかったポルトは、54分に2枚替えを実行する。セルジオ・コンセイソン監督はFWチキーニョ・ソアレスとウリベを下げて、FWゼ・ルイスとMF中島翔哉を投入した。

 すると中島がポルトの攻撃のテンポを変え、より攻撃的な姿勢を押し出せるようになっていく。ボールを持てば積極的に前を向いて仕掛けてファウルをもらい、セットプレーのチャンスを創出する。試合のリズムが明らかに変わり、それまでほころびを見せなかったポルティモネンセの守備陣も徐々に出足が悪くなっていった。中島の存在がボディブローのようにじわじわと効いてきていた。

 アディショナルタイムも含めてあと5分耐えきれば、ポルティモネンセにとって価値の大きな勝ち点1をもぎ取れた。だが、あんなものを見せられてはどうしようもなかった。大砲の一撃を浴び、城壁が崩壊してしまった。

 起点になったのは中島だ。87分、右サイドでパスを受けた中島は横方向のドリブルで中にボールを運ぶと、ペナルティエリア内に侵入していたコロナとワンツーを試みる。そこでリターンパスがずれてしまったが、最終ラインから攻め上がってきたDFイバン・マルカノが絶妙なタッチで左にボールを流す。そしてフリーになっていたDFアレックス・テレスが自慢の左足を振り抜いた。

権田に非なし。どうしようもなかった一発

権田修一
【写真:ポルティモネンセSC】

 まさに大砲のような一撃だった。アレックス・テレスが放ったミドルシュートは残像が残るほどの速度で豪快にゴール左上角に突き刺さった。ポルティモネンセの守備陣も為す術なし。欲し続けていた先制点がポルトにもたらされた。

 GKの権田に一切非はない。どうしようもなかったのだ。むしろ3試合連続でゴールマウスを託された日本代表守護神は会心のパフォーマンスを見せていた。果敢な飛び出しでクロスやハイボールに食らいつき、正確なパンチングで何度もピンチの芽を摘んだ。横に振られても正確なステップワークで対応し、35分にはチキーニョ・ソアレスが放った至近距離からのヘディングシュートも正面に入ってがっちりキャッチ。的確なコーチングで守備陣を統率し、ロングフィードでカウンターの起点にもなった。

 ポルティモネンセも権田も90分間のうちほとんどの時間で完璧なパフォーマンスをしていたが、アレックス・テレスの左足から放たれた大砲は全てを覆すとんでもないパワーを爆発させた。ポルトは何としても欲しかった勝ち点3をもぎ取った。

 コンセイソン監督は試合後、『Sport TV』のインタビューで「中島とゼ・ルイスによってベンチから何かを変えようとしたが、うまくいったと思う」と自身の采配を振り返った。攻めてはいるもののゴールをこじ開けられずにモヤモヤ感が漂う中、背番号10の日本人アタッカーはチームにエネルギーを注入し、指揮官の求めていた「何か」を変えたのだった。

 ポルトにとって苦しみながらも手にした勝ち点3が持つ意味はとてつもなく大きいだろう。暫定首位に立ったことで24日にジウ・ビセンテ戦を控えるベンフィカにプレッシャーをかけられる。もしライバルの結果が悪ければ、正真正銘の首位に躍り出る。

 一方、18チーム中17位に沈むポルティモネンセの落胆は大きいはずだ。途中までは完璧だったのに、イレギュラーとも言える異次元のシュート1本で勝ち点1すらも失ってしまった。これで10試合勝利がなく、今季11敗目でまたしても浮上のきっかけを掴むことができなかった。

 安定したパフォーマンスで定位置を確固たるものにしつつある権田は、今後もポルティモネンセの守備陣を支えるキーマンになっていくだろう。途中出場メインながら攻撃にアクセントをつけ、リズムを変えられる特別な力を持った中島もポルトでより重要な存在になっていくはず。今回の日本人対決で出番のなかった安西や西村拓真も含め、両チームにおけるサムライたちのさらなる活躍と貢献に期待したいところだ。

(文:舩木渉)

【了】

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