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バルセロナはなぜナポリに苦戦を強いられたのか。ドローに払った大きな代償、拭いきれなかった弱点とは?【欧州CL】

チャンピオンズリーグ(CL)・ラウンド16の1stレグ、ナポリ対バルセロナが現地時間25日に行われ、1-1のドローに終わっている。分厚い守備を展開してきたナポリに苦戦を強いられたバルセロナ。グリーズマンの得点でなんとか同点には追いついたが、2ndレグに向け不安を感じさせたのも事実だ。(文:小澤祐作)

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

前半はナポリに軍配

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【写真:Getty Images】

 新型コロナウイルスの感染が拡大しているというイタリア国内だが、現地時間25日に行われたチャンピオンズリーグ(CL)・ラウンド16の1stレグ、ナポリ対バルセロナの会場となったスタディオ・サン・パオロには、4万4388人もの観客が集った。そして、ピッチ上ではそんな人々の期待を裏切らない、激しい攻防が繰り広げられたのである。

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 試合は立ち上がりからバルセロナがボールを支配し、ホームのナポリがブロックを築いてカウンターを狙う、という構図になった。4-3-3の布陣を用いたバルセロナに対し、ナポリは4-5-1の形で守備を展開(スタートは4-3-3)。縦の各レーンを的確に埋め、中盤と最終ラインの距離感をコンパクトに保つことでバルセロナに隙を与えなかった。

 困ったアウェイチームはなかなか縦にボールを収めることができず、横パスやバックパスが必然的に増える。FWリオネル・メッシが中盤まで下りて組み立てに参加し、そこから崩しに行こうと試みるもナポリの中央は非常に堅く、鎖はなかなか解けない。支配率は確かに高かったが、ボールを持っているというよりは持たされている、といった印象の方が強かった。

 ただ、バルセロナにも可能性を感じた場面がいくつかあったのも事実。たとえば23分の場面では、メッシがDFネウソン・セメドとMFイバン・ラキティッチの間にポジショニングし、クロアチア人MFを少し前の位置へ動かす。そしてメッシの下へボールが入ると、MFピオトル・ジエリンスキがそこに釣り出される。その瞬間にアンカーのMFセルヒオ・ブスケッツが少し前の位置で今度は相手のMFディエゴ・デンメを引き出した。

 するとメッシはリスクを冒しながらもブスケッツへパス。そして、ボールを受けた背番号5は厳しい体勢ながらもダイレクトでラキティッチへパスを送った。この直前にラキティッチは少し前の位置へ移動しており、メッシとブスケッツで相手のMF2枚を釣り出しているので、この瞬間のクロアチア人MFは中盤でフリーとなり、前を向くことができたのだ。結果的にチャンスには結びつかなかったが、ナポリの守備陣に対してはこうしたダイレクトパスを織り交ぜたプレーが効果的であったと言えた。

 ただ、それ以上にナポリのディフェンスは堅かった。DF二コラ・マクシモビッチとDFコスタス・マノラスの2CBの関係性も抜群で、中央の突破はほぼ不可能。バルセロナは、相手ペナルティエリア内にほとんど侵入することができなかったのだ。

 バルセロナは攻守の切り替えも素早く行ったが、ナポリのダイレクトパスを的確に使ったカウンターに手を焼いたのも事実。ファウルで止めざるを得ない場面も多々あり、ストレスが溜まる一方であった。

 すると29分、自陣でDFジュニオール・フィルポがボールをロスト。これをジエリンスキに拾われ、左に展開されると、最後はFWドリース・メルテンスの鮮やかなコントロールショットがゴールネットに突き刺さる。バルセロナはペースを掴めないまま、先制点を献上してしまうことになった。

後半に出たナポリの疲労

 失点後もギアが上がらなかったバルセロナは、そのまま前半を0-1で終えることになった。45分間で支配率71%を記録したものの、シュート数はわずか2本で枠内シュートは0本。対してナポリにはシュート数3本を許すなど、攻守両面でうまくいかなかったのは確かだ。

 ただ、ナポリに与えたダメージがなかったわけではない。ボールを動かし続けるということは、その分相手の動きも活発になる。また、ナポリは自陣でブロックを築いているため、カウンターの開始位置も必然的に深くなり、相手ゴールまでの長い距離を走り切らなければならない。バルセロナの選手より疲労が溜まっていたのは明らかだった。ナポリは「頭を使って」守備を展開していたが、その「集中力」も疲労へと繋がっていると言えた。

 そして、その影響は後半にハッキリと出てしまった。ナポリは時間が進むにつれボールホルダーを捕まえきれなくなり、何度かゴール前への侵入を許したのだ。最後に身体を張って失点を許さなかったのは見事だったが、前半にはなかったような綻びが生まれてしまったのである。

 これを好機と見たバルセロナは、56分にラキティッチを下げ、よりボールを前に運べるMFアルトゥールを投入。結果、この交代は見事な効果を発揮し、バルセロナは全体の攻撃が加速。ナポリにとっては疲労も溜まる中、厳しい戦いを強いられた。

 そして、その交代からわずか1分後。ブスケッツのパスに抜け出したセメドが中へグラウンダーのクロスを送ると、最後はFWアントワーヌ・グリーズマンが押し込み、バルセロナが同点に追いついた。ナポリにとってはまさに一瞬の隙を突かれた形での失点だった。

 その後も疲労の影響を隠し切れなかったナポリは、選手間の距離が曖昧となる場面も何度かあり、前半には与えなかったスペースをバルセロナに与えてしまうことになる。もちろんカウンターから何度かチャンスは迎えたものの、GKマルク=アンドレ・テア・シュテーゲンのファインセーブに阻まれるなどペースは取り戻せず。ホームゲームながら耐える時間帯は続いた。

 しかし、バルセロナはテンポの良いパスで崩しにかかったが、フィニッシュの精度を欠くなど追加点を奪うには至らず。結果、試合は1-1で終了している。

バルサが露呈した弱点

ジュニオール・フィルポ
【写真:Getty Images】

 後半はナポリに疲労の色が出たとはいえ、バルセロナが苦戦を強いられたのは確かだ。シュート数は最終的に8本を記録したものの、枠内に飛んだのはわずか2本。決定機をしっかりものにし、アウェイゴールを奪ったのは大きいが、ナポリの徹底した守備を前に満足いく攻めが出来たかと言えば決してそうではないだろう。

 そして、懸念されていた弱点も、この日は拭いきることができなかった。左サイドバックに入ったジュニオール・フィルポだ。

 バルセロナ不動のサイドバックであるDFジョルディ・アルバが負傷中ということもあり、起用された23歳の若手DF。しかし、ポテンシャルを秘めているのは確かなのだが、まだまだトップレベルにあるとは言い難いパフォーマンスに終始してしまった。

 パス成功率は91%と良い数字が出ているのだが、そのほとんどがバックパスや横パス、つまり無難なプレーに終わった印象が強い。攻撃面で存在感を出せたわけではなく、引いた相手に対しほとんど仕事を果たすことができなかった。守備面でもボールロストが失点の引き金となるなど、なかなかパフォーマンスレベルが上がり切らなかった。

 バルセロナと言えば、J・アルバのフリーランニングが武器の一つだ。メッシとの相性も抜群で、この二人だけで崩し切ってしまうことができる。メッシは人を動かすパスを送ることができる選手だが、J・アルバのランニングはメッシのパスを逆に引き出すことを可能としている。彼らにしかわからない、呼吸のようなものがあるのだろう。

 そのJ・アルバとフィルポを比べるのは確かに酷だが、後者の場合はボールを引き出す動きがあまりに少ない。メッシがパスを出した後に動き出すといったシーンも見られ、相手陣内深い位置でパスを受けても仕掛ける姿勢は皆無で、ナポリ守備陣に余裕を与えてしまった。

 バルセロナが苦戦した理由が彼一人にあるわけではないが、右サイドのセメドがアシストを記録したように、フィルポにももう少し積極的な姿勢があれば状況はまた変わっていたかもしれない。ナポリが引いていた分、あまり飛び込めなかったというのはもちろんあるが…。

 ただ、守備面に関しては擁護できない。飛び込んで入れ替わってしまうシーンもあり、全体的にドタバタしている印象は否めなかった。ドリブルで突破された回数は2回で、これはチームワーストの成績である。J・アルバの復帰が長引き、カンプ・ノウでの2ndレグでもフィルポが出場するとなると、このあたりは不安と言わざるを得ない。

 バルセロナはアウェイゴールを奪えた。これは間違いなく大きい。しかし、この試合でブスケッツ、MFアルトゥーロ・ビダルの2ndレグ出場停止が確定。DFジェラール・ピケも負傷するなど、ドローに払った代償も大きかった。

(文:小澤祐作)

【了】

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