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アーセナル、悪夢のEL敗退を招いたダビド・ルイスの致命的なエラー。オリンピアコスに封じられた2つの得点ルート【EL】

UEFAヨーロッパリーグ(EL)ラウンド32・2ndレグ、アーセナル対オリンピアコスが現地時間27日に行われ、1-2でオリンピアコスが勝利した。2戦合計スコアは2-2で並んだが、アウェイゴールで上回ったオリンピアコスがラウンド16へと駒を進めた。アーセナルが早すぎる敗退へと追い込まれた理由を探る。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

アウェイゴール数で決着

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【写真:Getty Images】

 その瞬間、アーセナルのキャプテンは悔しい表情を浮かべ、その目には涙がにじんでいるように見えた。

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 延長後半、アディショナルタイムの目安となる2分を40秒すぎたころだった。エジルのクロスが相手に当たって、ピエール=エメリク・オーバメヤンの足下に落ちてきた。しかし、アーセナルのキャプテンが放ったシュートは、ゴールの枠を捉えることができず。その数十秒後にタイムアップの笛がエミレーツ・スタジアムに鳴り響いた。

 1stレグで1-0の勝利を掴んだアーセナルは、ホームで2ndレグを戦った。1stレグではベンチスタートとなったダニ・セバジョスやニコラ・ペペ、ギリシャ遠征に帯同しなかったエクトル・ベジェリン、メスト・エジルが先発で起用されている。

 両チームともになかなか決定機を迎えることがないまま迎えた53分、オリンピアコスはCKから先制に成功。2戦合計スコアが1-1で並び、試合は延長へと突入した。

 アーセナルは113分にオーバメヤンのゴールでラウンド16への切符を掴みかけたが、120分にユセフ・エルアラビが起死回生の勝ち越しゴールを奪った。2戦合計スコアは2-2で並んだが、アウェイゴールで上回ったオリンピアコスがラウンド16へと駒を進めた。

封じられたゴールへの筋道

 パスは十分すぎるほどに回した。785本のパスを成功させ、62%のボール保持率を記録している。それでもアーセナルはゴールが遠かった。

 アーセナルは120分で13本のシュートを放ったが、枠を捉えたのは4本のみ。オリンピアコスも9本しかシュートを打つことができなかったが、守備を固めるゲームプランが功を奏し、セットプレーから2つのゴールを奪うことに成功した。

 オリンピアコスは累積警告による出場停止で、ポルトガル人DFのルベン・セメドを欠いた。センターバックはウセイヌ・バとパペ・アブ・シセのセネガル人コンビが起用された。

 データサイド『Who Scored』によればアーセナルは42本のクロスを上げているが、成功率はわずか14%。2人合わせて24本のクリアを記録した192cmのバと197cmのシセを前にして、精度の高い左足を持つブカヨ・サカやエジル、ペペのクロスは無力だった。

 クロスが効果的でないならば、ニアサイドを攻略しなければいけない。しかし、1stレグと同じ4-3-3で試合に臨んだオリンピアコスは、両サイドアタッカーが守備時はDFラインのヘルプに加わって、実質的に6バックを形成した。ワイドの位置はラザール・ランジェロビッチとマテュー・ヴァルビュエナがカバーし、両サイドバックがハーフスペースを埋めた。

 これほどに守備を固められると、マンチェスター・シティやリバプールであっても崩すのには苦労する。ミケル・アルテタが監督に就任して3か月も経たないアーセナルであればなおさらだ。果たして、アーセナルはボックス内に侵入する術を失った。

アーセナルの致命傷

 オーバメヤンのゴールはクロスから生まれているが、エジルのクロスはウセイヌ・バに跳ね返されている。2ゴールでエバートン戦の逆転勝利の立役者となったエースが、華麗なバイシクルでこれを沈めた。バが下がりながらクリアしたボールがちょうどオーバメヤンの前に飛んでしまったことは、オリンピアコスにとっては不運だった。

 アルテタも黙って見ていたわけではなく、試合中に修正を施している。1度目は84分、ベジェリンを下げてジョー・ウィロックを投入し、最終ラインにスコドラン・ムスタフィ、ダビド・ルイス、グラニト・ジャカを並べた。しかし、10人をボックス内へと配置するオリンピアコスのゴールをこじ開けることはできなかった。

 2失点はともに、CKからのクロス対応で得点者をフリーにしてしまった。1点目のシーンでオリンピアコスの両CBは、ゴールから少し離れた位置にスタートポジションをとった。アーセナルはゴール前を長身選手がゾーンで守るが、ムスタフィのヘディングわずかに届かず。ヴァルビュエナのキックとともにゴール前へ侵入したシセがダビド・ルイスの目前に飛び込み、難なく頭で合わせた。

 2失点目でエルアラビは、ダビド・ルイスとソクラティス・パパスタソプーロスの間にポジションをとっている。ソクラティスはダビド・ルイスにマークを受け渡したつもりだったが、ダビド・ルイスはシセのオフサイドをアピールしていて後ろの存在に気づいていなかった。クロスボールはちょうど両DFの間に渡り、フリーのエルアラビはゴールに冷静に流し込むだけだった。アーセナルにとってセットプレーは致命傷であり、あまりにも脆弱だった。

ダビド・ルイスのエラー

 アーセナルは直近のエバートン戦でもセットプレーから2失点を喫している。1つはFKのセカンドボールを押し込まれ、もう1つは跳ね返したボールをゴール前に入れられて、ゴールへ流し込まれた。この試合の2失点とエバートン戦の2失点には共通する部分が多かった。オリンピアコスからしてみれば、してやったりの結果となった。

 1失点目のムスタフィのヘディングが届かなかったのは問題ではない。2失点目のソクラティスは、大外にいた相手との1対2の状況だったので、エルアラビのマークをダビド・ルイスに受け渡したかったのだろう。しかし、ダビド・ルイスはどちらのシーンでも相手の存在を認識することができなかった。

 負傷の重症度はまだわからないが、ムスタフィは太ももを痛めて103分に交代している。前半戦は序列が下がっていたが、12日間に行われた4試合すべてに先発してきたムスタフィはこの試合で出色のパフォーマンス見せていただけに、チームにとっては痛い離脱となりそうだ。

 アーセナルはEL敗退と引き換えに、セットプレーの守備という大きな教訓を持ち帰ることとなった。CL出場権を獲得するには、9位に甘んじているプレミアリーグで上の順位に行くしかない。シーズンが終わったときにこの教訓が生かされたかどうかは、順位表が教えてくれることになりそうだ。

(文:加藤健一)

【了】

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