中島翔哉はなぜ先発起用されないのか? 首位奪還のポルトで脇役に甘んじる最大の要因は…

ポルトガル1部リーグ第23節が現地2日に行われ、ポルトはサンタ・クララ戦で2-0の勝利を収めた。6連勝でベンフィカを抜いて15試合ぶりの首位に返り咲いたが、ベンチスタートが続く中島翔哉はチームに貢献しきれなかった。脇役に甘んじるのはなぜか。財政難に喘ぐポルトにおける背番号10の現在地を読み解く。(文:舩木渉)

2020年03月03日(Tue)12時00分配信

text by 舩木渉 photo Getty Images
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ポルトがついに首位の座に

中島翔哉
【写真:Getty Images】

 ポルトがついに首位の座を奪還した。現地2日に行われたポルトガル1部リーグ第23節のサンタ・クララ戦に2-0で勝利すると、約1時間後に終了した試合でベンフィカがモレイレンセと1-1のドローに終わった。

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 前節終了時点で2位ポルトと1位ベンフィカの勝ち点差は1ポイントだったため、勝ち点3を積み上げた前者が順位表のトップに返り咲いたのだ。一時は10ポイント近く差をつけられたこともあったが、実に15試合ぶりの首位。今節は激しさを増す優勝争いにおいて、重要な転換点となったかもしれない。

 だが、中島翔哉にとって自身の立場を一変させる試合にはならなかった。ベンチスタートが続くポルトの背番号10は、サンタ・クララ戦もキックオフの笛をベンチから聞くことになった。

 先月27日のヨーロッパリーグ(EL)ラウンド32のレバークーゼン戦2ndレグでコロンビア代表FWルイス・ディアスが負傷し、約1ヶ月の戦線離脱が見込まれる中で、中島の出番が増えていくという見方もあった。ところがセルジオ・コンセイソン監督はウィルソン・マナファを右サイドバックで起用し、その右サイドバックからヘスス・コロナを本来の攻撃的なポジションに移すことを選んだ。ターンオーバーの少ないチームとはいえ中島の公式戦5試合連続スタメン落ちは厳しい立場だと言わざるをえない。

 サンタ・クララ戦のポルトは普段の4-4-2とは違う、4-1-4-1でスタートした。中盤アンカーに負傷から復帰したキャプテンのダニーロ・ペレイラを据え、右サイドにはオターヴィオ、インサイドハーフをセルジオ・オリベイラとコロナに任せ、ルイス・ディアスが主戦場としていた左サイドに本来ストライカーのムサ・マレガを配置したのである。

 試合が始まると、劣悪なピッチコンディションの影響などもあってサンタ・クララに苦しめられる展開に。パスが思うように通らず、手堅く守る相手をなかなか崩せなかった。それでも37分にマナファが自ら中央突破を試みて、セルジオ・オリベイラとの華麗なパス交換から先制点を奪ってポルトが先制に成功する。

中島が先発起用されない理由

 後半も煮え切らない流れではあったが、76分にセルジオ・オリベイラのフリーキックにセンターバックのイバン・マルカノが頭で合わせて貴重な追加点を挙げる。70分にアレックス・テレスのPK失敗などもありながら、相手の勢いを抑え込んで辛くも勝利につなげた。

 中島に出番が回ってきたのは大勢が決した後、最終盤の90分からだった。アディショナルタイムを合わせても、与えられたプレー時間は7分ほど。さすがに勝利をほぼ手中に収めた状態かつ、この短時間で大きなインパクトを残すことはできなかった。

 昨年12月下旬から今年1月上旬にかけて、中島は4-2-3-1のトップ下として躍動していた。しかし、負傷によって1ヶ月近く離脱を強いられ、復帰してからはベンチ生活が続いている。おそらく今のままではスタメンに返り咲くことは難しいだろう。

 大きな理由の1つは守備面でのリスクが大きいことだ。これまで中島は流れを変えてより攻撃的に、前へ出たいタイミングの交代カードとして重宝されてきた。確かにピッチに入れば積極的な仕掛けの姿勢は目立ち、実際に流れを変えてゴールにつながった試合もあった。

 例えば先月23日のポルティモネンセ戦では、終盤に決勝ゴールの起点になったのが中島だった。先月4日のポルトガルカップ準決勝1ndレグでも、相手は2部のアカデミコ・ヴィゼウだったが、交代出場した彼の存在が攻撃にエナジーを注入した。

 一方で、ベンフィカ戦やELのレバークーゼン戦など、いわゆるビッグマッチで先発起用されていない事実をしっかりと見極める必要がある。中島はどんな展開でもボールを受ければ前を向いてドリブルを仕掛け、相手の脅威となれる。

 実際、相手守備陣がドリブルを仕掛けた中島を囲んでファウルで倒すシーンは多く見られる。ファウルで止められる分には問題ないが、もしファウルにならなければボールを奪われてカウンターのチャンスを与えてしまうことになるのだ。奪われどころが悪いと、一気にゴールを陥れられる危険性は高まる。これはポルトにとってチーム全体のリスクになりかねない。

ポルトの財政はひっ迫

 相手のレベルが上がればポルトが主導権を握って試合を進められる保証はなく、押し込まれる展開も覚悟しなければならない。そうなれば中島も苦手な守備に追われる時間が増えるだろうし、ボールを持ってドリブルを仕掛ける場所が適切でなければ、長時間また別のリスクを抱えて戦わなければならない。

 流れを変えることはできるが、流れを作ることができない。もちろんゴールやアシストといった目に見える数字をほとんど残せていないことも要因ではある。ただ、それよりも起用することによって流れを壊しかねないリスクを孕んでいる。これこそが中島がセルジオ・コンセイソン監督の信頼を掴みきれず、出場時間が伸びていかない原因になっているのではないだろうか。今のままでは今後も“格下専用”の交代カードとしての役割しか与えられない可能性もある。

 先日、ポルトが今季前半に5200万ユーロ(約63億円)もの赤字を計上していたことがポルトガル証券市場委員会の発表によって判明した。これはチャンピオンズリーグ(CL)本戦出場を逃したことや、昨夏の移籍市場で高額な新戦力を多く獲得したことが影響していると見られる。もちろんELの早期敗退も今後のクラブ財政には大きな痛手だろう。

 これほどまでに大きな損失があれば、当然補填の必要がある。昨年10月頃から今季は大きな赤字が想定され、選手の放出が必要と報じられていたが冬の移籍市場では全く動かなかった。よってUEFAが定めるファイナンシャル・フェアプレー(FFP)の規則を遵守するために、今季終了後の夏の移籍市場で選手売却によって1億ユーロ(約120億円)近い利益をあげなければいけないという。

 そのため主力の大量流出は避けられそうになく、市場価値の高いマレガやダニーロ・ペレイラ、チキーニョ・ソアレス、アレックス・テレスといった主力中の主力を引き止めることは難しいだろう。加えてファビオ・シルバやビトール・フェレイラら下部組織育ちの有望株も放出せざるをえないかもしれない。

 できるだけ主力の流出を食い止めようとするなら、余剰戦力の中からも高額な収益を見込める選手を放出して補おうとするはずだ。中島も1年でポルトを追われる可能性もゼロではない。だからこそリーグ戦に集中できるシーズン終盤戦、日本の10番には現状の課題を改善したうえで、クラブが手放すことを拒むようになるほどの大活躍を期待したいところだ。

(文:舩木渉)

【了】

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